◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第28回

【裁判傍聴】「パンツの中に手を入れた認識はない」電車で痴漢したイケメン

 痴漢で裁かれる被告人には同種の前科がいくつもあることが多い。そして、そのような被告人に限って、過去ブレイクした映画『それでもボクはやってない』の主人公気取りで「やっていません」と訴えたり、逮捕時に「パンツの中に手を入れた認識はない」などと言う。本当にタチが悪いのだ。

 今回の被告人、Sは逮捕当時24歳。妻と産まれたばかりの子どもの3人暮らし。かつての河相我聞に似た、長身のイケメンだ。痴漢の罰金前科と、電車内での盗撮の罰金前科がある。

 そんなS、昨年4月以降に職場が変わり、東急東横線で通勤することになった。そして、やはりと言うか、がっかりと言うか、秋からまた痴漢業に復帰。週に1~2度というハイペースで痴漢を繰り返す日々が始まった。そして今年の2月。15歳の女子学生に狙いを付け、電車に乗り込み痴漢。翌日も同じ子に痴漢。膣に指まで入れたというからホントに地獄行きだ。調子に乗ったのか、その3日後も、再び同じ被害者に狙いを付けたが……。

「左指をパンティに差し入れると、被害者に腕をつかまれた」(検察官が読み上げた調書より)ちなみになぜか法廷では女物のパンツのことをパンティということが多い。

 ところで、この逮捕劇には映画顔負けのドラマがあった。被害者の調書によれば、

「去年の10月頃から通学途中の電車でSから痴漢されていた。秋もパンツの中に手を入れられて、今回、木曜日、金曜日と連続して痴漢に遭って、限界でした」

 そして被害者は、学校で友人に相談。その友人は、

「木曜に初めて痴漢のことを聞きました。一緒に聞いていた友人も、心当たりがあると言ってました。翌日、再び被害に遭って泣いていたので、翌週、一緒に捕まえることにしました」

 どうも東横線に乗る女子学生の間では知られた痴漢だったようだ。友人の調書は続く。

「その日の朝、Sを見つけました。電車のホームで端から端まで往復したり、明らかに(被害者を)探してる風でした」

 朝の忙しい時間帯に、ものすごい情熱だ。被害者によればその後の顛末はこうだ。

「友人と満員電車に乗ると、後ろにいて、お尻を指先で触ってきました。痴漢されたことを知らせるため、友人に空メールを送りました。そうしたら、スカートをまくりあげられ、パンツに手を入れてきたので、勇気を出して手首を掴み、『この人痴漢です』と言いました。
 でも犯人は『吊り革に捕まってたんだから、そんなことできないよ』と言いました。すると友人が犯人の手を掴み、駅員さんのところに連れて行きました。途中、私たちを振り切って逃げようとしたり、全く反省してないし、許せないです」

 女子学生のチームワークが痴漢逮捕につながった。Sは当時「パンツの中に手を入れたところを掴まれた、というが、そういう認識はない」などとうそぶいている。が、被害者には何度も顔を見られてるんだから、えん罪の可能性はナイだろう。

 公判では観念したようで「膣内まで指を入れたから捕まるかも、と思ったけど、抵抗しなかったので、この子なら大丈夫だと思った」などと、調子に乗って犯行を続けた理由を語っていたが、被害者によれば抵抗した形跡はある。思い込みとは恐ろしい。そして最後は、

「妻とは子どもができてセックスがなくなった。風俗に行く金もなく、性欲を解消する手だてがなかった。今後、カウンセリングを受けたり、趣味を見つけたりしたい……」

 なんとも不安な供述でしめくくっていた。趣味を見つけたいって。大丈夫……? 家計が苦しく、電車以外での通勤も不可能、みたいなことも言ってたが、痴漢に対する異様な情熱を仕事に向ければ、あっという間に車が買えそうな気もするのだが……。
(文=高橋ユキ)

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