◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第24回

仕事も信頼も失う恐怖 元オリンピック選手による覚せい剤事件

516X28RR6CL.jpg*イメージ画像:『オリンピック 栄光の軌跡』DVD

 9月にコカイン所持で逮捕された田代まさしが、覚せい剤取締法違反で再逮捕された。さらに19日には、田代まさしに覚せい剤を売り渡した罪で大阪府の男性(39)も逮捕。服役を経て、もう薬物とは縁を切っていただろうと思っていたが、そうではなかった。仕事も信頼も失い、これからどうするんだろう、と心配にすらなる。今回は、そんな著名人による覚せい剤裁判を紹介しよう。

 かつて「和製コマネチ」と呼ばれた元体操オリンピック選手、中島(旧姓:岡崎)聡子(49)。昨年2月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、同年5月に裁判が開かれた。なんと5度目の逮捕というから驚きだ。

 法廷に現れた彼女には、当時の屈託のない笑顔、健康的な肉体の面影は何も残っておらず、ガリガリの体にブカブカのカーディガン、目の下には大きなクマ。覚せい剤で裁かれる被告人特有の、異常な肌つやの悪さが際立っていた。

 「間違いありません」と、これまた覚せい剤の被告人にありがちな、何とも言えない気だるい語り口で、罪を認めた。

 覚せい剤8袋、合計約4.3グラムと、末端使用者にしては大量に所持して車を走行していたところ、ウィンカーを出さずに右折したために職務質問を受けた。挙動不審だったことから警察に連行され、車中から覚せい剤を発見されたという。また前日にも西川口の路上で車を停止させ、覚せい剤を吸引していたことが分かっている。

 前回、判決を受けたのは2006年。当日付き合っていた男性Aも一緒に逮捕された。08年8月に出所したが、ほどなくAと同棲を始め、12月からまたも覚せい剤に手を染めていったという。

 所持していた覚せい剤が大量な上、袋それぞれの量もバラバラ。自宅からは、小分けにする道具、秤、未使用の注射器などが押収されている。検察官は中島に売人の疑惑を感じているらしく、こう追求した。

検察官「なぜ、覚せい剤を8袋、重さバラバラに分けたんですか?」
中島「秤が家にあったので……面白くて……以前の、死別した主人が、覚せい剤を売る仕事をやっていて手伝っていたことがあるので……」
検察官「あなたも、覚せい剤売ろうとしていたんじゃないですか?」
中島「それは違います」

 限りなく怪しい。

 また、密売人とどうやって再会したかについてはこう述べた。

「たまたまです……亡くなった主人の知り合いで、向こうから新宿の路上で声をかけてきたので……」

 そんな都合のいい偶然、ホントにあるのかと聞きたくなるし、懲りもせず覚せい剤を注文しているところがすごい。過去の服役はなんだったのか……。

「やめようと思っていました。以前の彼氏とも別れようと思っていたけど、離れていた時間もあるし、もうちょっと話したいと思って……」

 覚せい剤裁判の被告人は、このように、よく分からない言い訳が多い。要するにシャブ仲間という側面もありそうだ。

 証人出廷した息子を前にして「一日も早く更正したい」と涙ながらに誓った中島。しかし、前刑の裁判のときも「子供に胸を張れる生き方がしたい」と更正を誓っていた……。

 判決は懲役3年。

「二度と、裁判所に現れないですむようにしてください。そうしないと、あなたは一生刑務所を出たり入ったりすることになりますよ」

 裁判長のまじめな説諭に強くうなずいていたが、果たして本当にヤメられるのだろうか?
(文=高橋ユキ)

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