◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第21回

【裁判傍聴】出会い系にご用心! カノジョの『告白』にキレた男が取った行動とは?

20101004.jpg*イメージ画像:『告白・性体験 2010年 11月号』ビデオ出版

 出会い系サイト、出会い系カフェなど、出会いの場所だらけの昨今。でも、いいことばかりじゃない。

 先月26日、豊島区のラブホテルで女性の変死体が発見。翌日、無職の紺野正美(29)が逮捕された。ホテルで、被害者の女子大生吉原麻実さん(22)を殺害し、財布などの入ったバッグを奪った疑いが持たれている。2人の出会いは「出会い系カフェ」。店で男性客が女性客を指名して知り合うシステムだった。

 また今年6月、藤枝市の河川敷でホテル従業員平林浩介さん(27)の遺体が発見された。死体遺棄の疑いで9月末に逮捕された森元稔子容疑者(34)。2人は出会い系サイトで知り合い、付き合っていたという。

 今回取り上げる事件の2人も、始まりは出会い系サイトだった。

 オシャレというより懐かしのフォークシンガー的なロン毛に、めくれた唇。猫背で雰囲気は暗く、ボンヤリしてる。彼、塩原健(逮捕当時24)は昨年2月、付き合っていたAさん(25)を包丁で刺し殺した罪で逮捕、起訴された。

「2008年の12月から、付き合い始めました。ケータイの、出会い系サイトで知り合って。(彼女が)結婚してるって分かってました」

 出会いから事件までは、3カ月しか経ってない。

「(関係に)抵抗はあったけど、薄れていきました。初めて会った日、彼女の部屋に行ったんですけど、元ダンナと鉢合わせして、押し入れで会話聞いてたりしました……」

 絵に描いたような「間男」だ。

「2月半ばから同棲始めました。彼女のこと、好きだったし。彼女の親友の家も近いところにある3DKの部屋を借りました。彼女と、彼女の子ども2人、4人で暮らすことになるので。精神的に問題があったから、彼女も不倫を繰り返したんだろうし、友達が近くにいれば、安心してくれるかな~って」

 この発言によれば、性に奔放だったAさんとその家族に愛情を注いでいこうという決意をしたかのようにも見えるのだが、一体なにがあって、同棲直後に殺人事件が起こったのだろう?

「事件前日、彼女から、過去の話を聞きました」

塩原は相変わらずのひょうひょうとした口調で続ける。 

「昔の男とボクを、比較されていろいろ言われました。前のダンナと結婚してるとき、たくさん不倫してたとか、次男を妊娠してるときに、不倫をしてクラミジアをうつされたとか、次男の父は本当は誰だか分からないとか、いわゆる4Pをやったことがあるとか……」

 衝撃の告白。そして次の日。

 朝から会社を休み、酒を飲んでいた塩原は、前日のAさんの話のモヤモヤをぶつけた。

「そういう話、ホントに普通だと思ってる? と彼女に聞きました。そうしたら、自分では普通だと思ってる、と。ぶっきらぼうに返されて、それでカチンときて」

 台所にある包丁で、背中を刺してしまったという。

「何が普通なのか分からなくなって、混乱と怒りがあって。とにかく、彼女のことを殴る蹴るとかじゃ済まないなと思って、次の攻撃、と」

 俗にいう『キレた』ってこと? という弁護人の質問には相変わらずひょうひょうと、こう答えていた。

「そうですね、ボクなりの言葉で言うと」

 ボクなりの言葉っていうか、手垢がつきまくった言葉だと思うけど……。それにしても、過去のセックスライフを暴露して、次の日に殺されるとは……。

 よほどの引きこもりでない限り、別に出会い系に頼らなくてもいろいろな出会いがある。ただそこから、付き合いたいな~と思える人を探して、ゴハンに誘って、やっぱり違うかなと思ったり、よし付き合おうと思ったり、とにかく男女の付き合いに至るまでのプロセスはめんどくさい。でもそれが醍醐味だろう。

 出会い系というモノは、ノーマルな出会いから付き合いまでの面倒臭さをすべてすっ飛ばしてしまえるところがメリットかもしれないが、トンでもない相手に出会ってしまうデメリットのほうが大きいような……。
(文=高橋ユキ)

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