
いま世間を騒がせてる男と言えば、なんといっても押尾学(32)。一緒に合成麻薬をやっていた女性の容態が急変したものの、通報することなく死亡させたとして、保護責任者遺棄致死など4つの罪名で起訴されている。有名人から一転、被告人に。その転落ぶりはすさまじいが、有名人の薬物がらみ裁判というのは、酒井法子、岡村靖幸、倖田梨紗をはじめ、これまでも結構あった。今回はそんな有名人薬物裁判の1つを取り上げてみる。
2007年9月、「globe」のラップ担当、マーク・パンサーの妻が逮捕。六本木の路上に停めた車内にいたところ職務質問を受け、バッグの中から白い粉のついたビニールが発見された。粉はケタミン、また尿からはケタミンのほかコカインの陽性反応も出ていたという。当時の調べに対しては「コカインについては知らない。白い粉は胃が痛いとき、痛み止めとして飲んでいた」と言っている。
職務質問を受けたのは6月なのに逮捕が9月なのはなぜだろう? 有名人の薬物事件というのは、このように気になることが多々ある。結局この件では起訴されなかったが、同年10月、再逮捕。翌月に、初公判が行われた。
マーク・パンサーの妻・酒井薫子(当時29)は保釈されており、黒いワンピに黒いカーディガン、黒いタイツ、と全身黒ずくめファッション。また、起訴内容は「9月頃、自宅でMDMAを摂取した」というモノだった。
自宅で使用したという情報を、どうして警察がつかんだのか……? ほんと、気になることが多い。
冒頭陳述によれば、酒井は98年に短大を卒業し、定職に就かず暮らしていた。02年にマーク・パンサーと出会い結婚。長女をもうけるが、事件当時は夫の実家に預けていて夫婦2人暮らし。高校からクラブに入り浸り、2度程MDMAを使ったことがある、ということだった。
本人の調書はこんな感じだ。
「青や赤の錠剤で違法とは知っていましたが、MDMAと呼ぶとは知らなかった」
あまり薬に知識がないという姿勢を見せているのだろうか。入手経路と使用状況については、こう述べた。
「7月の終わりに家族でハワイのオアフ島にバカンスに行きました。ワイキキに1人で行き、現地人の友人3人と遊んでいました。そのときその中の一人が『女に効くバイアグラ飲ませたらそいつセックスのとき感動してた』という話をして、その流れで私に女物のバイアグラとエクスタシーをくれました。断ろうと思いましたがなんとなく断れず、そのままもらってしまい、女物のバイアグラはその場で使い、エクスタシーはクスリを入れる入れ物に入れておきました。その後帰国して、自宅にいるとき、家族のこと、お金のことなどを考えたらイライラして酎ハイを10缶くらい飲みましたが、余計イライラしてきたので、ハワイでもらったエクスタシーと、赤玉とよばれる睡眠薬を一緒にチューハイで飲みました。その後気持ちが悪くなりました」
女物のバイアグラが気になるところだが、スルーで被告人質問。まず6月に逮捕されたときのことを尋ねられ、
「ケタミンについては、去年12月に六本木のディスコでもらいましたが、ケタミンとは知らず、胃の痛みがなくなると言われてたので、ずっと痛み止めだと思ってました」
と述べていた。酒井は04年に胃がんの手術を受け、胃をほとんど切除している。でも、六本木で胃薬なんてもらうか……? しかもチューハイを10缶も飲んだり、クラブ通いをしたり、あまり胃に優しくない生活に見えるが……。
9月にMDMAを使ったのは「つい飲んでしまった」。クラブは悪いところだから行かない、麻薬類は具合が悪くなるから飲みたくない、と供述。でもやっぱり、検察官に突っ込まれた。
検察官 「あなた、麻薬など飲みたくないと言ってますが、飲んだんですよね?」
酒井 「ハイ」
検察官 「クラブを悪く言ってますが、今回は家で飲んでますよね?」
酒井 「ハイ」
検察官 「8~9年前にMDMA使ったとき、気持ち悪くなったと言ってましたね、でも今回また飲んでますよね」
酒井 「飲んだのはそうですが、興味は全くないです。たまたま入ってて、まあいいや、と飲みました」
さらに6月に逮捕されたときのことについても、
検察官 「あなた、あのとき尿検査でコカインの反応が出ましたが、全く身に覚えないの?」
酒井 「はい」
検察官 「何か変なもの飲んだりは?」
酒井 「ないです、身に覚えがないので分からないです」
本当に身に覚えがなかったのか、常用してなかったのか、など、いろいろ気になるやり取りではあるが、裁判はここで終わった。
判決は初犯なので懲役1年2月、執行猶予3年。
「あなた、これからは出入りする場所、しっかりしていかないと……。しばしば、同じクスリで逮捕ということは多いので、十分気をつけて」と裁判長からも心配されていた。
裁判では夫、マーク・パンサーの上申書も提出され、今後の指導監督を誓っていた。もう執行猶予期間も終わっている。きっと、しっかり監督しているのだろう。
(文=高橋ユキ)
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