【風俗ちょっといい話】 6月の熟女花嫁

0605kekkon_fla.jpg※イメージ画像:Thinkstockより

 
 
 
「わたし、今月いっぱいでお店を辞めることになったんです(ニッコリ)」
 
 
 
 池袋の某熟女風俗店に勤務する真奈美さん(仮名)が幸せそうな笑顔でそう言い出したのは1年前、昨年6月初旬のことだった。

 44歳の真奈美さんが風俗で働き始めたのは7年前のこと。夫を亡くし、私立中学校に通う二人の娘を育てるための選択だったそうです。それゆえに、風俗に抵抗を感じていたという真奈美さんですが、勤務してすぐに常連客がつくようになりました。永島さん(仮名)という48歳の会社経営者でしたが、道楽者で風俗通いが趣味の人でもありました。

 永島氏は真奈美さんとプレイを重ねていくうちに彼女の身の上話を聞くようになりました。そのうち永島氏は風俗嬢と客という関係を超えて、真奈美さんを本気で好きになりました。それで、プレイ中に口説きました。「ゆくゆくは結婚してほしい」と…。

 真奈美さんは彼の真剣な想いを受け止めたかったのですが、問題を抱えていました。まず、亡き夫が残した借金、そして両親の介護にかかるお金。なによりも、思春期の娘が二人いて、その時期ゆえの反抗的な態度で家庭がギスギスしていること。前のふたつは永島氏の協力でクリアできそうですが、娘のことは…。そう思うと彼女はいい返事をできずにいました。

 一方、永島氏も問題を抱えることになります。真奈美さんを好きになって1年後のことですが、事業に失敗して風俗通いどころではなくなってしまったのです。

 ちなみに永島氏は真奈美さんのことを好きでプレイ中に口説きはしましたが、風俗嬢と客との関係でしかなかったので、メアドなどの交換はしていませんでした。また、真奈美さん自身も真面目な性格だったので、お客さんにメアドを教えることはありませんでした。その結果、週イチ以上で真奈美さんを指名していた永島氏は姿を消しました。

 そして、6月のある日、1年ぶりに永島氏が客としてお店を訪れます。その雰囲気を見て、真奈美さんは彼が何も言わなくても、その置かれている状況を察します。その後、再び音信不通になりましたが、翌年の6月のある日、またもや1年ぶりに永島氏が現れたのです。事業失敗後、コンビニでのアルバイト生活を強いられていて、経済的に苦しい彼にとっては、風俗で遊ぶことは年に1回がやっとの状況だったのです。

 当然、次に真奈美さんが永島の相手をしたのは、翌年の6月のことでした。
 
 
 
「わたし、永島さんに聞いたんです。なんで、会いに来られるのが“毎年6月”なんですかと…。その答えは、わたしに初めて会った(初めてプレイした)のが6月だったと…」
 
 
 
 そして、さらなる真相を知った真奈美さんは驚き、喜びます。永島さんは最初に会った時から気持ち、つまり「結婚したい」という想いが変わってないので、毎日、必死に働き、借金を返して、だけど1年に1回、真奈美さんに会うことを糧にすれば耐えられたというのです。

 そんな永島氏が「あと1年で全額返済できそうだから」と言い残し、プレイを終了したのは2年前のこと。そして、その1年後、つまり、昨年の6月初旬に彼は現れました。

 今度は自分が答えを出す…1年前にそう決意していた真奈美さん。結果、永島氏と同じ苗字になりました、昨年6月に。
 
 
 
「娘たちも成人して、事情を理解してくれるようになって。6月の花嫁ですって? いやいや、こんなオバサンだから(笑)」
 
 
 
 謙遜しながら笑った真奈美さん。式などは挙げずに永島氏と娘さんと4人で記念写真を撮っただけだという。その様子を、古いガラケーのカメラで撮った写真で見せてくれた真奈美さん。画素数が少ないから不鮮明だったけど、その笑顔はキレイだった。そして、その6月で退店した彼女…。きっと幸せに暮らしていることだろう。

 たった1年前のことだけど。だけど、これから6月になると思い出す話になるのだろう。
(文=子門仁)

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