水嶋ヒロだけじゃない「芸能人編集長本」の明暗

 処女小説『KAGEROU』(ポプラ社)で賛否両論の嵐を巻き起こした水嶋ヒロが編集長に就任し、3月31日に創刊されたライフスタイル誌「GLOBAL WORK」(講談社MOOK)が何かと話題だ。ファッションブランドを展開しているポイント社が発行し、ブランド名がそのまま雑誌の名前となっている本誌。同社が「ファッションを通じてナチュラルなライフスタイルをエンジョイしてほしい」と企画し、打診を受けた水嶋も、「いろいろな人たちの思いが結集した形として世に広められたら、今までと違ううねりみたいなものを生み出せるんじゃないか」と快諾したという。

 報じられたところによれば、編集会議でスタッフからの提案をいきなり「いや、違う」と否定する場面もあったといい、編集長にかける水嶋の意気込みが伝わってくる。300円という安価で書店に並ぶこの雑誌、目次を見れば「骨美人ノススメ。」「韓国の朝ごはんをいただきましょう。」「春一番のキッズ服を自分らしくリメイク。」といかにも”自然体”である。『KAGEROU』のように、さらけ出された彼の内面を垣間みる居心地の悪さが一向に感じられない。誌面作りに際して水嶋を起用する必要はあったのか? とふと疑問もわき上がる仕上がりだ。特設webサイトではなんと編集会議の動画もアップされているが、編集長というより広告塔としての役割の方が大きいのだろう。

 結局、水嶋ヒロの個性がどこまで生かされているのか見えないこの雑誌、行く末が気になるところではあるが、これまで雑誌の編集に携わった芸能人は彼だけではない。有名なところでは、ビートたけしが編集長、所ジョージが副編集長を務め、2009年4月に創刊された「FAMOSO」(ネコ・パブリッシング)だろう。かつての写真週刊誌「FOCUS」を模した表紙はコンビニにも置かれており目を引くデザインだった。プライベートで交流のあった二人がエープリルフールのために思いついた、という通り、内容は広告から記事まですべてがパロディー&ギャグと徹底していた。採算度外視で高級紙を使ったために増刷が困難だったという、おまけのエピソードまで見事なオチがついた。創刊号は20万部限定だったが、ほぼ即日で完売しており、ネームバリューに内容が伴っていた結果だろう。

 水嶋ヒロと似たところでいえば、10年8月に発売された『旬刊小栗』(ワニブックス)。読んで字のごとく、小栗旬責任編集だといわれている。ラジオ『小栗旬のオールナイトニッポン』を雑誌にしたというが、当時ゲスト出演した藤原竜也・山田孝之との「完全撮り下ろしポートレイト&超ロング対談」などが収められており、完全に小栗旬ファンでなければ楽しめない内容に仕上がっている。

 また『GLOBAL WORK』と同じファッション的側面からは、09年に松田龍平と結婚し、長女を出産したファッションモデル太田莉菜も、16歳の時に「hotikiss」(プレビジョン)という雑誌の編集長を務めていた。これはカルチャー雑誌「Spoon.」の増刊号として数回、発行されている。自ら足を運んだ”フジロックフェスティバルリポート”から、お買い物ガイドやオフショット満載の”ブリティッシュスタイルブック”など、当時の彼女の個性が前面に出ており、同世代から主婦層まで女性に広く好評だったという。

 小栗旬のように完全にファンへ向けての雑誌にするか、それとも太田莉菜のように自分の個性や興味を思いっきり打ち出すか、はたまたビートたけしや所ジョージのように伝えたいテーマを決めて、その作業に徹するか。今回の水嶋ヒロ編集長は、このどれにも属していないようにも見える。水嶋のファンを取り込むには勢いが足りず、ファッション好きを取り込むにしても、”なぜ水嶋ヒロ?”という疑問符は付いてしまうだろう。先日はGIRL NEXT DOORの新曲PVで、原作&脚本&出演としてかかわっていた水嶋。おそらく今、彼は”モノ作り”全般に興味が向いているのだろうが、今後どこに着地するのか、気にかかるところである。

『KAGEROU』

 
小説家から編集者へ転職!?

amazon_associate_logo.jpg

men's Pick Up