美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「性と教育とAVと」

  美しい花には棘がある――。誰もが備える多面性を表現したこの言葉。特に男を惑わす美女には危険な一面がある、という男の自戒的な意味を表しているわけだが…。勝手に舞い上がって棘が刺さってしまうのは男のせいとも言える。美女は美女で悩むことも多いのだ。AV女優・美咲かんなも悩み多き美女のようで…。美しくもどこか陰のある彼女が、素直な気持ちをふしだらに綴る。

 

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美咲かんな

美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「性と教育とAVと」

 ここ最近はずっと語り始めがコロナコロナで、「芸がない」とうんざりしている人も多いことだろう。何か面白いことを書きたいと考えてはいるものの、人付き合いも得意ではなくアクティブなわけでもない平凡な私の人生には、特筆すべき変わった出来事はそうそう起こらないのだ。世の情勢により暮らしが制限される今、どうしても話題はニュースで取り上げられているようなものばかりになってしまう。

 先日は自粛の影響で妊娠に関する相談やトラブルが増えているというインターネットの記事を読んだ。

 中には望まない妊娠の相談もあるらしい。アバンチュールを楽しむ機会もなければ恋人ができる気配すらもなく、地味な日々を送っている私にとって、色んな意味でショッキングなニュースであった。

 恋愛を楽しむ人たちを純粋に羨ましく思う気持ちと、寄せられる妊娠の相談はかなり幼い世代からのものもあるという現実にやるせなさがぐるぐると頭から離れず、ふとしたきっかけで思い出してしまったのだ。

 最近の子供たちがどのような性教育を受けているのか、身近に詳しい人間がおらずよくわからないが、自分が学生の頃を思い返すとあまり具体的な内容に触れていたという印象がない。

 勉強が嫌で聞いてなかっただけだろうか。

 性(ここでは性交やそれに関連する行為を指す)について最低限の説明しか受けていないにも関わらず、周りの人々は「やることをやっていた」のだ。足りない知識はネットや噂話、はたまたAVから拾い集められ、何が正しいかも判断できないまま過ごしている人も少なくはないかもしれない。

 間違ったセックスとしてAVが晒されることも多く申し訳ない気持ちになることもあるが、作っている現場で「現実ではできないような作品が欲しい」というユーザーの要望に真摯に取り組んでいるスタッフや演者の姿も見ているので…ずるいといわれてしまうかもしれないが、あとは他の映像作品と同じように視聴する側の良識に託したいところである。より楽しんでもらおうと作る側も一生懸命なのだ。鶏が先か、卵が先か明言できないのと同じようなジレンマがある。

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 性について真剣に悩み始めたのは大学1年の頃で、このエッセイではお馴染みのエアコンなし部屋の彼(気になる方は過去回をチェック)との交際がきっかけだった。

 彼は私と同じように人と接するのが得意ではなく、性に関しても積極的ではなかった。

 「セックスよりもオナニーの方が好きなんだよね」と、平気で言ってしまう正直でデリカシーのないやつだったが、恋もセックスも超ビギナーだった私は胃袋をつかむべく…もとい、股間をつかむべく必死だった。独りよがりのエンターテインメントではなく、相手を思いやりながら性に向き合いたいと思ったのだ。

 付き合っていくうちにセックスに興味が薄いことや物理的にデリケートなのは個性だということ、そして大事に思う気持ちとムラムラは別に存在することなど、複雑な男女のあれこれを知った。その後、他の人と交際をすればまた新しい学びもあったのかもしれないが、気後れしてしまい新しい恋はできないまま。そうしているうちにAV女優という道を選び、今度は仕事をしながら色んな人の「性との付き合い方」を見て、聞いて、知ることができている。

 AVやネットの情報は全てではないし、当てはまる人もいれば全く当てはまらない人もいる。そこから得られるものを鵜呑みにしてしまうのは得策ではなく、実際は関係をもつ相手と歩み寄りながら自分たちに合うスタイルを探るのがいいのではないかと思う。とはいえ、マンネリを脱出するためのちょっとしたスパイスにするのは悪いことではないだろう。何事も使い方ひとつで変わるのだ。

 妊娠や避妊に関しても間違った情報は多く、正しい情報を知らないし知ろうともしないまま性行為をしている人も、結婚して子育てをしている人もいる。軽い気持ちで避妊や感染症予防をおざなりにしてしまうのは、個人的にはよくないことだと思う。

 命や健康に関わることには多少慎重であるべきというのが、私の考え方だ。

 「どの口が言っているんだ」というお言葉もありそうだが…それは、申し訳ない。表現者の端くれとして何を伝えるべきかまだ決めかねている部分がある。

 私にとって性はただの娯楽ではない。生業に関係しているということもあるけれど、自分や他人の体と心に真面目に向き合うということでもあると思う。こんな話ができる人は、周りにあまりいない。真剣に話そうとしても恥ずかしがられてしまったり、面白がられてしまったり、取り合ってもらえないことの方が多く、それが悲しい。

 いけない。またぼやいてばかりで肝心の実戦はできず…春などこないまま今年も盆を迎えてしまった。とにかく、君たちも暑さで体を壊さぬように気を付けて。一緒に暑い夜を過ごそうじゃないか!なんてね。

美咲

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【美咲かんな】
生年月日:1994年7月3日
スリーサイズ:T158・B85・W58・H88(cm)
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世の中は相変わらず某感染症が猛威を振るっており、日々不安と闘いながら生活している。自分の健康面に関してはもちろんだが、感染症というのは「自分さえよければ」が通用しない。人と関わることは元々少なく、帰属意識というのも強い方ではないが、こんなことで社会との繋がりを感じてしまうとは実に皮肉だ。

 6月某日、私は第3回目のエッセイの内容をどうするか悩んでいた。連載が始まってひと月も経たないというのに、既にスランプ気味である。どうにか絞り出した文章を打っては消し打っては消し、思い悩んでいると突然テレビから「うどんは青春の味」という力強い言葉が聞こえてきた。

 気温が30度を超える日も多くなった東京は、いよいよ夏本番という雰囲気である。外出自粛もまだ心掛けてはいるが、仕事で外に出る機会は増えた。プライベートでは家族で出かけることがほとんどで車移動も多いが、時間の管理と駐車場に困らないという理由から仕事や用事で動く場合は公共交通機関を主に利用する。以前は環境問題の観点からか「公共交通機関を使いましょう」という呼びかけをよく耳にした気がするが、最近は感染症対策もあって、真逆の風潮である。

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