池袋駅の地下構内を横断し、北口階段を上って地上に出た。そのままラブホ街に向かって歩きながら、会話を続ける。
「池袋にはよく来るのかな?」
「たまに買い物で来るくらいですね」
「そうなんだぁ。ちなみに、今日は何時までに帰ればいいのかな?」
「7時くらいには駅に着いていたいです」
「駅って池袋の駅? それとも自宅の最寄り駅?」
「えっと、池袋の駅です」
「了解! 絶対に時間をオーバーしないように気をつけるね」
「は、はい。すいません」
「謝ることないって。旦那さんが帰ってくる時間なんでしょ?」
「い、いいえ。いつもパートが終わって帰宅する時間がそれくらいなので…」
「なるほど、そういうことね。分かったよ」
「はい。ありがとうございます」
「ところで、パートってどんなお仕事してるの?」
「す、スーパーの店員です。レジ打ちとか…」
「へぇ、そうなんだぁ。A系のスーパーとか?」
「あっ、は、はい。A系列のお店です」
しまった!
スーパーと言われて、すぐに頭に浮かんだA系のお店を挙げたのだが、ドンピシャで当たった格好だ。
カマをかけたつもりはさらさらないが、相手がそう取ってしまう可能性もある。人妻さんとのデートで、相手を警戒させるような言動はご法度なのだ。
「ごめんね。立ち入ったこと聞いちゃって」
「い、いえ。大丈夫です」
「プライベートなことは一切話さなくていいからね」
「お気遣いありがとうございます」
「ゆかりチャンって、こういう出会える系で遊ぶのは初めてなんだよね?」
「は、はい」
「やっぱり緊張してるよね?」
「は、はい。今、汗が止まらなくて、ドキドキしてます」
「無理はしないでね。もし嫌だと思ったら、このまま回れ右して駅に戻ってもいいんだよ」
「だ、大丈夫です」
「本当に? 俺って、すっごくエッチだよ」
「え?」
「あっ! 安心してね。変態チックなことはしないから。ただ、女性にご奉仕するのが大好きだから、たくさんペロペロしちゃうんだ。そういうの平気かな?」
「だ、大丈夫です」
「ありがとう。それじゃあ、ここに入ろうか?」
「はい」
こうして、池袋北口界隈で中ぐらいのレベルのラブホテルにチェックインした。