ゆっくり近づいていくと、その途中でナナエちゃんも筆者を認識した。
ニコッ。
恥ずかしそうに笑みを浮かべ、頭を下げるナナエちゃん。
くーっ、なんて可愛らしいんだ!!
彼女の初々しさに、いつも以上にドキドキする筆者。
「ゴメンね、待たせちゃったかな?」
「い、いいえ。私もいま来たばかりです」
「本当に久しぶりだね。元気にしてた?」
「おかげさまで。ショーイチさんもお元気でしたか?」
「うん! 健康だけが取り柄だから、風邪ひとつひいてないよ」
「フフフ。羨ましいです」
「ここで立ち話もアレなんで、歩きながら話そうか?」
「は、はい」
こうして、アルタ前からラブホ街に向かって歩き始める。
横目で彼女を観察すると、きょろきょろと周囲の視線を気にしたり、必要以上にコチラに近づかないよう微妙な距離をキープしたりと、かなり緊張していることが分かった。
二度目のデートとはいえ1年近くも間が開いているので、それもしょうがなかった。
こうなったら、いつものように道化を演じ、リラックスしてもらうよう努力するしかない。
「ねぇ、大丈夫?」
「え?」
「1年前に会った時の俺と同じ印象かな?」
「どういうことですか?」
「ほら、会っていない間、記憶の中で俺のことを美化したりしてなかった?」
「うーん、どうでしょう。すぐにショーイチさんだと分かったので、同じ印象ですよ」
「それなら良かった」
「ショーイチさんは、今日会ってガッカリしてません?」
「何言ってるの! ガッカリなんてするわけないじゃん。さっきから俺はずっとニコニコしてるでしょ?」
「そうですね」
「ナナエちゃんが相変わらず綺麗なんで、すごく嬉しいんだ」
「そ、そんなぁ」
「本当だって。ナナエちゃんから久しぶりにメールもらえた時は、嬉しくて思わずガッツポーズしちゃったくらいだもの」
「本当ですか?」
「うん! 今も嬉しくて嬉しくて、叫びだしたいくらいだよ」
「フフフ。ありがとうございます」
待ち合わせ場所ではぎこちない笑みだったが、ようやく自然な感じで笑ってくれた。
1年間の空白を埋めるべく、さらに畳みかけるように会話を続けた。