「こんばんは、アヤメちゃんかな?」
「あっ、はい。そうです」
「さっき【ワクワクメール】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。アヤメです。こちらこそよろしくお願いします」
緊張のせいなのか、アヤメちゃんは少しキョドっていた。ここは話を進めるより、まず彼女にリラックスしてもらうことを優先するべきだと判断した。
「大丈夫? ビックリしてない?」
「え?」
「送った写メより数百倍はエロそうな顔してるでしょ、俺って」
「そ、そんなことないです」
「無理してない? 今から俺、回れ右して目を瞑って100数えるから、その間に帰ってもらってもいいんだよ」
「フフ、そんなことしませんよぉ」
アヤメちゃんは、ここで初めて笑顔を見せてくれた。どうやら筆者の作戦は成功したようだ。
「それじゃあ、立ち話もなんだから、歩きながら話そうか?」
「そ、そうですね」
「このままホテルに向かうってことで大丈夫?」
「は、はい」
こうしてホテル街に向かうことになった。
筆者はこの時点で、久しぶりに“あるラブホテル”を使うことを決心していた。
それが明治通り沿いにある「B」だ。普段使っているラブホから少し離れていて、その分歩くことになるのが難点だが、南国リゾートの雰囲気を漂わせる、筆者がここぞという時にだけ利用する高級ラブホテルなのである。
もちろん料金もかなり高めなので、年に数回くらいしか利用できない。アヤメちゃんには、その価値があると判断したわけだ。
そのBに向かう道すがら、気になっていたことを聞いてみた。
「今日はお仕事お休みだったの?」
「え? あ、はい」
「週にどれくらい働いてるのかな?」
「え、えっとぉ…」
悪い癖が出てしまった。風俗嬢にインタビューするノリで、ぐいぐいと迫ってしまった。
しかし、アヤメちゃんの反応はどうにも鈍い。
はっ! そういえば、
“アレコレ詮索されるのは嫌なので”と彼女が書き込んでいたではないか!!
これは大きな失敗だ。慌てて話題を変え、当たり障りのない会話に終始した。