バイトの内容を言いよどんだということは、ファーストフードやショップの店員といったベタなものではなさそうだ。もしかして、エッチなお仕事なのか? もちろん、これ以上突っ込んで聞くわけにはいかない。
「そうだ! 聞くのを忘れてたけど、俺みたいなので大丈夫?」
「もちろんです! すごく優しそうなので…」
「優しいかどうかは分かんないけど、絶対にカノンちゃんの嫌がることはしないから安心してね」
「はぁい」
「でも、それだけ可愛いんだから、彼氏もいるんでしょ?」
「それが、先月終わったばかりなんですよぉ」
「おろっ? 随分と明るく話すね」
「はい。もうガッツリ切り替えてますから」
「強いねぇ。ちなみにどんな人だったの?」
「奥さんと子供さんがいる人でした」
「おおっ、不倫ってやつだね」
「はい」
「カノンちゃんみたいに若いコが妻子持ちの男と付き合ってたのかぁ。羨ましいなぁ」
「え?」
「あっ、誤解しないでね。俺は独身で、彼女もいないからさ」
「へぇ、そうなんですかぁ」
「その彼とはどうやって出会ったの?」
「飲み会で知り合って、その日のうちにホテルに行って…」
「そのまま関係が続いたって感じなの?」
「そうですね。性格は合わなかったんですけど、エッチのノリがあった感じで…」
ゴクリ
思わず生唾を飲み込んでしまった。エッチの相性が良ければ、妻子持ちの男ともお付き合いしちゃうというカノンちゃん。ということは、今日の筆者の頑張り次第で、そういう関係になることも夢ではなさそうだ。
ハっ、いかんいかん!!
なんでも前向きに捉えすぎてしまうのは、筆者の悪い癖だ。期待した分だけ、それが叶わなかった時の落差が激しくなる。その悲しみで何度枕を濡らしたことか。
そうこうしているうちに、無事ラブホに到着。部屋に入ってから、もう少し突っ込んだ質問をしてみることにした。
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