こんなファーストメールを送信したところ、ものの数分で彼女から返信が届いた。そこから数通のメールのやりとりを経て、無事に約束が成立した。
待ち合わせ場所は、新宿アルタから徒歩十数秒の所にある大型靴屋の前。そこで待っていると、時間通りにムツミちゃんらしき女性が現れた。
ぐぬぬッ
遠目で彼女を発見した途端、苦虫を噛み潰したような顔になってしまう筆者。内なる声が“今すぐこの場から逃げ出せ”と警告を発してきた。
ムツミちゃんは、とにかく奇抜な髪型だった。強烈なアシンメトリーで、右側頭部は地肌が見えそうなくらいに刈り上げていて、左側は肩に届く長さ。
以前タレントの兵藤ゆきがしていたような髪型で、彼女が近づいてくるにつれ、顔の造作も似ていることが分かった。
街行く人たちも、チラチラと物珍しげに彼女に視線を送っていた。
こ、これは久々の顔パス案件だろう…。
生唾をゴクリと飲み込み、ゴメンナサイする準備を整えた。だがここで、彼女の募集文にあった“濃厚なエッチがしたい気分なんです”というフレーズを思い出してしまった。
濃厚なエッチさえできれば、それで上等だよな。どうせ一回こっきりなんだから、こういうゲテモノ相手でも試してみる価値はあるはずだよな。
筆者の悪い癖である。前向き思考にもほどがあるというものだ。
覚悟を決めて何食わぬ顔で彼女に近づき、声をかけた。
「こんばんは、ムツミちゃんだよね」
「あっ、はい」
「さっき【イククル】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。こちらこそ」
なんとも手ごたえのない反応だった。せっかくこちらが意を決して話かけたというのに…。
だが、この程度で腹を立てたりしない。“濃厚なエッチ”のためなら、泥水をガブ飲みすることも厭わないのだ。
「さっそくだけど、ホテルに向かうってことでいいかな?」
「は、はい」
こうして、ラブホ街に向かって歩き始めることに。
筆者が選んだホテルは、昭和臭が漂う激安のラブホだった。フロントで料金を支払い、無事部屋に入室。
いつもならここで、安心してもらうために優しさアピールをしたり、気分良くなってもらうために褒めちぎったりするところだ。しかし、ムツミちゃんの反応のなさに心が折れてしまい、筆者は道化を演じることを放棄していた。
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