マフラー越しの声は辛うじて聞き取れる程度だったが、なんとか会話は成立した。
サワコちゃんの承諾を得たので、ここからが本番だ。
見るからにガチガチに緊張している彼女にリラックスしてもらわなければ、心の底からエッチを楽しんでもらえないだろう。
ということで、ホテルまでの道中、彼女の緊張を解くべく努力せねばと思っていたのだが、サワコちゃんの様子がどうにもおかしい。
筆者の斜め後ろを1歩遅れでついてくるサワコちゃん。こちらが歩調を彼女に合わせようとすると、向こうも歩調を緩めてくる。
別に手をつないだり腕を組んでるわけでもないのに、こうも警戒心が強いとは…。
なにかワケありなんだろうか。
視線の方も、常に周囲をキョロキョロといった感じのサワコちゃん。
“さすがにこれは”と思い、無理に話しかけるのは止めた。横目で彼女の存在を確かめながら歩き続けることに。
地上に出てから立ち寄ったコンビニでも、サワコちゃんは一定の距離を保ったままだった。
お目当てのラブホテルに到着し、部屋に入ってふたりっきりになったところで、サワコちゃんはやっとマフラーを外した。
「わっ! 写メで見たよりずっと可愛いね」
「…そんなことないです」
「いやいやそんなことあるって! ほら、俺の顔を見てごらん?」
「え?」
「今、俺すっごくニコニコしてない?」
「は、はい」
「サワコちゃんが可愛いから喜んでるんだよ」
「そ、そんなぁ」
「お世辞なんかじゃないよ。女性の容姿に嘘はつけない性質だからさ」
「ありがとうございます」
部屋でふたりっきりだというのに、サワコちゃんはうつむき加減で、なかなかこちらを真っすぐ見てくれなかった。声もかなり小さく、室内の暖房の音にかき消されてしまいそうなくらいだった。
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