筆者は覚悟を決め、彼女に話しかけた。
「あ、ミヨちゃんかな?」
「はい、そうです」
「さっき【PC★MAX】で約束したショーイチです。今日はよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
「で、さっそくだけど、俺ってこんな感じだけど大丈夫?」
「え?」
「ほら、嫌だったらこのまま顔パスしてもらって構わないからさ」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
チッ!
筆者のほうから逃げるつもりはないが、向こうが「嫌だ」と言ってくれればこの戦闘から逃れられたものを…。どうせだったら思いっきり変顔でもして語りかければよかったなぁ。
「そ、そう。じゃあ、行こうか?」
「はぁい」
おいおいおいおい! 違うだろっ!
せっかく筆者がへりくだって「顔パスしてもいいよ」と言ったんだから、お前も「私で大丈夫ですか?」くらい聞いたらどうなんだよ!!
いかんいかん。カルシウム不足のせいか、なんだか今日は怒りっぽいなと自覚した筆者。ここまで来たらこの出会いを楽しむしかない。くじけそうになる心に発破をかけ、ホテル街に向かって先導しながら歩き始めたのであった。
ホテルに向かう途中で、飲み物を購入するためコンビニに立ち寄ることに。するとその店内でミヨちゃんが話しかけてきた。
「私、お腹すいてるからなにか甘いもの買ってもいいですか?」
「あ、う、うん」
すると彼女はスイーツが並んでいる陳列棚の前に行き、イチゴのショートケーキが2個入ったパックを手に取った。
おいおいおいおいおい!
まさかその2個入りのケーキをひとりで食べる気じゃないだろうな!? だからお前はそんなに肥えているんだろがっ!
また心の中で毒づいてしまった筆者。ミヨちゃんはそのパックを筆者が持っていた買い物カゴに入れ、その後イチゴジュースも入れてきた。
自分の選んだコーヒーと共にレジで会計してもらう筆者。すでにミヨちゃんはスタスタと出口に向かって歩き始めていた。
おいおいおいおいおいおい!
そりゃあ最初から奢る気だけどさ。少しくらいは自分の分を支払おうっていう意思表示をしてもいいんじゃねぇか?
うーん、温厚で平和主義な筆者がここまでイライラさせられるとは。今日の対戦相手はなかなか手ごわそうである。
その後、昭和臭漂うグレードの低いラブホテルにチェックインした。