「それにしてもその年で年下の部下がいるなんて凄いね」
「うーん、そうでもないですよ。舐められないよう仕事で負けられませんから」
「へぇ、大変そうだね。ちなみにどんなお仕事なの?」
「一応設計関係ですかね?」
「えっ、じゃあCADの資格とか持ってるの?」
「あ、はい」
「凄いねぇっ! 俺も昔ためしにCADを覚えようとしたけど、30分で挫折したことがあるんだ」
「さ、30分でですか?」
「うん。一応WEBデザイナーだからたいていのパソコンソフトは使えるけど、アレだけは無理だね」
「そんなことないですよ。慣れれば簡単ですよ」
「いいや、違うね! あれは本当に頭のいい人じゃないと使いこなせないよ」
嘘八百を並べ立てて、相手を称賛するトコショー。ま、相手に気持ち良くなってもらうという行為は愛撫に通ずるものである。女性に不快感を与えず、気持ち良くなってもらうことだけを常日頃から考えている筆者ならではのべしゃりと言えるかもしれない。
あ、そういえば、以前もこのバーにCADを使う仕事をしている女性を連れてきたことがあったっけ。単なる偶然だろうけど、もしかしてそっち系の仕事をしている女性は酒とエッチに貪欲なのかも?
そんな世間話をしながら小一時間ほどかけて最初に注文したソルティ・ドッグを飲みきったトコショー。その間にレイナちゃんは4、5杯ほど飲んでいる。
「ね、レイナちゃん。俺、これ以上飲むと寝ちゃいそうだからそろそろホテルに行かない?」
「えっ、いいですけどお酒弱かったんですね」
「うん。嫌いじゃないけどスグ眠くなっちゃうんだ」
「それなのに付き合ってくれたんですか、なんかゴメンなさい」
「ううん、気にしないで! 俺も楽しかったから問題ないよ」
本当はあと数杯は飲めたと思うが、これ以上飲むとチンコが立たなくなってしまうのである。
「じゃ、その前にちょっとトイレに行ってくるね」
レイナちゃんを席に残しトイレに向かうトコショー。その際、テーブルの脇にあった伝票をさりげなくポケットに突っ込む。そしてトイレの後に店員に目配せして会計を済ませたのであった。
うーん、俺ってジェントルマぁぁぁん。
「じゃ、会計済ませたから出ようか?」
「えっ」
「うん、大丈夫だからさ」
「で、でも」
「いいってこれくらい奢らせてよ、ね?」
なにせ目の前にタダマンが待っているのだがら、数千円の出費なんざ鼻糞みたいなもんである。
気を抜くと足元がフラつきそうになるのを堪え、なんとかラブホテルに到着。
レイナちゃんがシャワーを浴びている間、洗面所の蛇口をひねり水をガブ飲みするトコショー。少しでも酔いを醒ますために必死なのである。その後酒臭い口臭にならないよう念入りに歯を磨くのであった。