即座にゴメンなさいしようと決断したのだが、内なるトコショーが囁いてきた。
おいおい、トコショー。こんな不細工なら少々の無茶したって大丈夫そうだぜ。それにお前にはマブタというものがあるじゃないか! 平井堅ばりに瞳を閉じれば行けるって!
節操のない内なる声が筆者の背中をプッシュしまくってきたのだ。
ぐぬぬぬぬぬっ!
ま、失恋の痛手を癒すにはこれくらいのショック療法のほうがいいかもしれない。そう考え、ギリギリの所で踏ん張ったのであった。
こうして数瞬の間に葛藤した後、意を決して筆者から語りかけた。
「こんばんは、ゆかりチャンかな?」
「あ、そうです! ショーイチさん?」
「うん。さっき【イククル】で約束したショーイチです。今日はよろしくね」
「こちらこそお願いしまぁす」
不必要なくらいにノリが良くて明るいゆかりチャン。
「俺、こんな感じだけど大丈夫かな?」
「全然大丈夫ですよ! ショーイチさんこそウチで大丈夫?」
う、ウチだと? お前は倖田來未かっ!?
自分のことをウチと呼ぶゆかりチャン。イントネーションは標準語そのものだが、ウチという言葉だけは倖田來未そっくりだったのである。まさかこの容姿で自分の事をイケてるとでも思っているのだろうか!?
あ、痛タタタタぁ。
その顔でウチとか言うなよなぁ。若かりしころ、うる星やつらのラムちゃんをオカズにシコシコした経験を持つトコショーからしてみたら、受け入れがたい現実である。
ま、語尾に「だっちゃ」とつけていないだけマシだろう。我ながら呆れるくらいの精神力を発揮し、なんとか堪える筆者なのであった。
「も、もちろん、ダ、大丈夫だよ」
「ふふふ、無理してない?」
「そんなことないよ。それより本当に俺で平気?」
向こうからゴメンなさいされることに一縷の希望を託し、再度尋ねる筆者。
「うん。写真よりも優しそうだし、全然OKだよ」
いつの間にかタメグチで筆者と会話していたゆかりチャン。はぁ、今日はいろいろ疲れそうだ。だが、これも経験である。当たりくじだらけの宝くじが存在しないのと同様、出会える系サイトだって可愛い娘ばかりではないのだから。
こうして渋々ながらホテル街に向かい、昭和臭漂うチープなラブホテルに入ったのである。
別々にシャワーを浴び、いざベッドイン。