【AV撮影現場今昔】 第5回:マニアAV花盛り

■女優が脱がないAV撮影に記者がクレーム

 もちろんこの時期、大手セルAVメーカーもぶっかけAV制作などをはじめ、自らも率先してこれら“ヘンなAV”に着手していた。その中で記憶に残っているのが、SODの『オナニーのお手伝いしてあげる』(通称『オナてつ』)シリーズと、その対抗シリーズであるMOODYZの『最高のオナニーのために』(通称『最オナ』)である。

 このシリーズは今までのビデ倫メーカー主導の単体アイドル作品にはない発想の“オナニーサポート”映像で、女優がカメラに向かってエッチな言葉を投げかけながらドアップで手コキやフェラを繰り広げ、ユーザーのオナニーを文字通り手助けするというまさに100%実用本位のヴァーチャル映像のAVなのだ。『オナてつ』のシリーズ初期は、これまでのAVでは必須条件であったSEXシーンがないということもこれまでのAVとは一線を画すものだった(シリーズ中期以降はSEXシーンが1回は入るようになったが)。筆者も何度かこのシリーズの撮影を取材したのだが、セルAVに活躍の場を移して当時大ブレイク中だった及川奈央であっても、2002年の『オナてつ』の出演ではSEXシーンがなかったことを覚えている。

 SEXが重要視されていない上に、女優の肌の露出についても作品コンセプト上はそれほど問題ではなく、女優がまったく脱がないシーンも多かったのもまたシリーズの特徴である。そこで思い出されてくるのが、この種の(あえて作品名の特定は避けるが)作品にあるお姉さん系巨乳女優が出演した撮影現場である。都内某所のスタジオでは、筆者の他にも2、3の媒体が取材に来ていた。

 現場では極力雑音を排するために写真は自由には撮れず、決められた時間にまとめて取材写真を撮るという形で進められていた。滞りなく撮影が進み最後のシーンを終え、取材陣も女優の写真を撮りこれでお開きということになったのだが、実はこの日の撮影は、SEXシーンがないどころか女優が服を脱ぐことすらなかったのだ。まさにこのジャンルの作品ならではの撮影なのだが、取材に来ていた某大手出版社の週刊誌の記者が、女優の裸を一切撮れないAV取材は有り得ないと、クレームをつけたのだ。

 現場でそれを受けたメーカーの広報氏は、撮影内容ははじめから決まっていたことだと説明するが記者は納得せず、メーカーの責任者に連絡するようにと要求し、事態はちょっと緊迫したムードとなった。半ベソをかかんばかりに記者とメーカーの間の連絡を取り持っていた広報氏が可哀相だったが、なんと結局のところ記者の要求が受け入れられたのだ。それから急遽、女優がオッパイを露出したシーンが本編に加わることになり追加撮影が行われ、取材陣も上半身裸の女優の写真を収めることになったのである。一般的なAVに対するイメージと、その一方で多様化を遂げていたこの時代のAVの実態とのギャップを実によく表している出来事である。

 現在であれば、取材するAVがどんなジャンルでどんな内容なのか、ネットなどで調べれば事前に簡単に分かるが、この時期にはさまざまな情報と思惑が錯綜し、時には誤解も生みつつ、業界再編の時代ならではのアツい想いに満ち溢れていたのである。
(文=宍戸ペダル)

宍戸ペダル(ししど・ぺだる)
前世紀からAVばかり見ているエロライター。AVレビュー、インタビュー、現場取材と目下大々的に(!?)活躍中!

 

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