エッジが効き過ぎ!? 一風変わったNTRの集大成『イビツナ』

yoshiuraibituna0507.jpg一筋縄ではいかないイビツなセックスてんこもり! ロリ体型から、熟れた女体まで、
バラエティ豊かに快楽に落ちていく様をご覧あれ

『イビツナ』 著:由浦カズヤ/ワニブックス

 突然ですいませんが、ぼく表紙にコンドームを持つ女の子が描かれているエロマンガ、好きなんです。色々ありつつOK、みたいな感じがするので!

 でもよく見て下さいな。大抵のコンドーム持っている表紙のエロマンガって「もっと、もっとちょうだい!」的な『ヘイ! カモン!!』感があるはずですが、この表紙はどうも男の手が強引すぎる。あれ? 無理やり? 涙目になっていますし。でもその割に口元が嫌がるでもなく、そしてOKサインのコンドーム。あれ、なんだろうこのシチュエーション。はっ、これはもしかして、なし崩し……?

 タイトルで気づくと思いますが、『イビツナ』は歪(いびつ)な恋愛を描いた作品集です。作者の由浦カズヤ氏は、こちらが最初の単行本なのですが、まあものすごく尖ったところから攻めてきたマンガがきましたわ。

 歪さ。なかなか言葉で表現しづらいものですが、ストレートな一対一の恋愛がない、というだけではなく、得も言われぬ背徳感にあふれている、というのが必要条件になってきます。正々堂々と愛を高らかに歌えない、けれど性を欲してしまう、そんな男女を描いた作品集なのです。

 わかりやすい例として「フレンズ」という作品を紹介してみます。青年・裕介は、高校以来、友だちづき合いをしてきた男女が付き合っているのを知ります。裕介は祝福しているかのように思えたのですが、男の親友・順一が出張に出た際に、女の親友・涼子の家にあがり、抱きしめてしまうのです。当然、涼子は拒絶するのですが、実のところ彼女には裕介に告白した過去があったり、裕介が非常に辛い苦境に立っているという話を聞いてしまい、なし崩し的に拒みきれず、彼を受け入れてしまうんです。

 涼子は背徳感に責め苛まれながらも、裕介とのセックスに激しく感じてしまいます。『やめて』、と言いつつも受け入れてしまった彼女。その後もやってくる裕介に応じて体を重ねてしまいます。しまいには強烈な絶頂をむかえながら、中出しまで!

 このマンガのすごいところはそこで「イヤなのに感じちゃう」で終わらないところ。どうしようもなく心が痛いはずなのに裕介との情事に感じてしまって、体を開いてしまう彼女。正式な彼氏である順一と二人になったとき、なんと彼が婚約指輪を渡すんです。ああ、もうやめて。それは泣いてしまいますよ。悪い意味で。

 心は許したわけじゃない。けれども体が求めてしまい、後に残るは悔恨の情と深い痛み。なしくずし、寝取られの真骨頂です。

 逆に痛みが最高に性的興奮を高ぶらせる場合もあります。「My妹クライシス」という作品は、近親相姦のエロティシズムをかなりの変化球で投げてきた作品です。

 兄の良太には彼女がいて、妹の美優も合コンなどによく行く、特にお互いを性的な目では見ていない普通の兄妹……。いないはずでした。しかしある日、妹の軽はずみな発言がきっかけで、お互いが求めていた異性だと気づいてしまうのです。とはいえすぐそこで求め合わないのが「イビツ」でございます。

 ある晩、良太が彼女とデートで公園に出かけていた時のこと。夜の公園の色気にあてられた彼女は、彼の体を求めてエッチをせがみます。ところがそこに、たまたま美優が男とともに出くわしたからさあ大変。良太は情事の真っ最中。『やべえ、妹に見られちゃったよ』状態……だったのですが、なんと妹の美優は行為真っ最中の良太のすぐそばのベンチに座り、男にプレイを促すのです。つまり、兄と妹、それぞれが別の人とセックスしているのをお互いが見ているという極めて歪な状態に!

 これは、見られて気持ちいいというプレイではありません。お互いが異性であるということを意識した上での、擬似セックス。兄も妹も、お互いがしたいけれどもまだその段階に達していないから、他の相手に姿を重ねて、隣にいる兄・妹を見て興奮をしてしまうセックスなんです。まあそれぞれの相手にしてみたら失礼きわまりないんですが、それどころじゃないですよ、隣に自分のよく知る、そして実は一番求めていた異性がいて、快楽を貪っているのですから。もう、相手が異性だというのを確認できたら、あとは直接……。

 兄妹ものエロマンガは多いですが、そこに至るまでの過程がここまで歪な作品は非常に珍しいです。しかも当の兄妹セックスは描かれないという。背徳感を感じて別の人を抱いているシーンだけが描かれることで、読んでいるこっちの興奮も高まります。くそー、くやしい、でもたっちゃう。

 他の短編も、一筋縄ではいかないものばかり。基本寝取られモノが多いんですが、そこまで鬱展開ばかりではありません。とはいえ寝取られであることには変わりないので、そういうのが苦手な人はご注意を。純愛ものとして「ボコデコ」「スリーピングプリティ」などもあり、こちらはもう甘々とろとろ、オチもありの傑作。痛い話からあまーい話まで描ける作家であることを証明してくれています。

 いやあ……快楽に負けちゃう女の子って……いいよね。
(文=たまごまご/たまごまごごはん

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