依存したい人続出!? 映画『あんこまん』で魅せた青山未来の“ダメ人間を引き寄せ、包容する力”

0715ankoman_02.jpg※画像:(C) MOOSIC LAB 2014

 物語は、ふたりが一緒に暮らしている部屋で、上半身裸で食事をするシーンから始まる。同性ならではの気取らなさと親密さが感じられ、微笑ましく映るところだが、ふたりのつながりは友情でも愛情でもない“依存”だ。そして、それは精神的な意味だけではなく、肉体的なものも含んでいる。

 智子は、中肉中背の地味な女性。映像の編集の仕事でなんとか生計を立ててはいるが、仕事先から罵倒を浴びせられることも少なくなく、生活は順調とは言いがたい。一方、沙英は仕事もせずに昼間から酒を飲み、自身の部屋でないにもかかわらず男性を連れ込み、ところかまわず寝るという無法者ぶりを発揮。さらに、智子の妹が旦那とともに、その日暮らしのような生活を送る智子を心配し、真っ当な職に付き、親を安心させるべきであると説教した際などは、

「元々他人じゃん、気にしなくていいじゃん」
「真面目っすね、すごいっすね」

 と、横からしゃしゃり出て空返事を繰り返し、まったく意に介することなく切り捨て、最後には智子の妹夫婦をやり込めて帰してしまう。ストーリーは、世間になんとか順応しようとしつつも、受け入れられない日々を過ごす智子と、世間からは切り離された存在であることを受け入れ、自由に気ままに日々を過ごし、すべてを受け入れているかのように振る舞う沙英の関係性を美しくも悲しく作り上げている。

 このストーリーの中で目を引くのは沙英の天真爛漫な姿、そしてダメ人間をありのまま受け入れる包容力の高さだろう。沙英の性格を、青山の人間性そのままだというつもりはない。しかし、無邪気に、思うがまま行動し、本能のまま快楽に興じている沙英という役は、青山にとってハマり役であったことは間違いない。AVでの彼女の姿を見たことがある人間ならば、劇中での彼女の芝居をそのまま“素”であると感じる者もいるはずだ。

 以前、青山をインタビューした際、「セリフとして、覚えているものを話すのは難しい。セリフをアドリブで言って監督に怒られちゃった…」と映画出演について語っていた。だが、この映画で見せた沙英の姿が彼女にとって“演技”だったのならば、脱帽せざるをえないほど見事に演じきっている。

 酔っ払って智子にキスをせがむ沙英、智子の身体にカレーをかけ食べる沙英、台所にて裸でお茶漬けをかっこむ沙英、これらはすべて青山だったらやりかねないというリアリティーが存在していた。また、逃げたくなるような惨めな日常を送っていたとしても、「なんとかなるんじゃない?」と言わんばかりの笑顔でケタケタと笑い転げ続ける沙英の包容力も同様だろう。

 劇中で描かれた智子は、にっちもさっちもいかない底辺を漂う生活を送っている。しかし、沙英が、青山さえ、そばに居て依存させてくれるのならば、そんな生活を送るのも楽しいのではないかとすら感じてしまう。青山の最大の魅力は、この何ものも受け入れてくれそうな不思議な包容力なのかもしれない。彼女に依存し、抗うことを放棄し、怠惰な日々を貪りつつ、そのまま世間からフェードアウトしてしまいそうになる感情を、ぜひ劇場で体験してもらいたい。それもひとつの幸せの形なのかも…。
(文=木嶋陽介) 
 

0715ankoman_03.jpg「MOOSIC LAB 2014イメージ画像」

音楽と映画の若き才能がぶつかる「MOOSIC LAB 2014」
7月5日(土曜)~8月1日(金曜)まで『新宿K’s cinema』にて公開中。
上映スケジュールなど詳細は公式ホームページへ
http://www.moosic-lab.com

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