祝、桂歌丸師匠復帰! カオス状態のイレギュラー回も絶賛された『笑点』の安定人気


 そんな状態であるから、ほとんどのメンバーが座布団10枚の大台にリーチをかけ、さすがにこれはないと思ったのか、圓楽が、ネタの中に「木久蔵ラーメンがまずい」という主旨のことを言い、自ら座布団を取り上げてもらいにかかったが、それでも木久扇は、「そういうこと言うもんじゃないですよ」と嗜めるだけ。圓楽の座布団が減るようなことはなかった。終盤には、お題を言うはずの木久扇がネタ振りを忘れて、変な沈黙が流れてしまうなど、これまでの『笑点』では決して見られなかったシーンが続いたのだった。

 また、そんな木久扇の司会とは正反対に、圓楽は、レギュラー陣の座布団を根こそぎ取るなどやりたい放題。挙句の果てには自分が座っていた空の席に勝手に座布団を置き、最終的には、メンバーの座布団は全員0枚なのに対して、自分の席には9枚置いてあるという異例の事態を引き起こしていた。

 とはいえそんな圓楽の暴走も、歌丸の復帰を見越してのことに違いない。歌丸VS圓楽という『笑点』の1つの見所を、歌丸復帰の際に盛り上げようという計算だろう。あまりにも偏った座布団の数は、メンバーからの「われわれには歌丸師匠がまだまだ必要なんですよ」というメッセージというわけだ。圓楽の腹黒キャラには、明らかにそうした意図があるに違いない。木久扇の司会ぶりには、これまでにない『笑点』の面白さが垣間見られたが、やはりそれも木久扇を取り巻く周囲の愛情があったからこそ面白く見ることができたのだろう。大いなるマンネリが魅力の『笑点』だが、それを育んでいるのは視聴者を含めた人々による愛情だといえる。歌丸の復帰で劇的に面白くなったり、スタンスが変わったりすることはないだろうが、それこそが『笑点』の魅力に違いない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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