表現の自由か、風評被害か…『美味しんぼ』騒動の根幹にある“フィクションの境界線”

0514oishinbo_main.jpg※イメージ画像:『美味しんぼ 110』小学館

 「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)連載の人気漫画『美味しんぼ』の描写をめぐる騒動が波紋を広げ続けている。福島第一原発を訪れた主人公・山岡士郎らが原因不明の鼻血を出すといった描写が風評被害につながるとして問題視され、自治体が発行元の小学館に抗議しており、国会議員が言及するほどの事態に発展している。その一方、作者の主張を政治的圧力で封殺しかねない状況に“表現の自由”が脅かされるのではないかとの危惧もあり、著名人や政治家を巻き込んだカンカンガクガクの状態になっている。

 同作は「福島の真実編」と題したシリーズに突入しており、前述の鼻血の描写や本人役で登場する前福島県双葉町長・井戸川克隆氏が「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは被ばくしたからですよ」「今の福島に住んではいけないと言いたい」と語る描写などが物議を醸している。

 同作の描写について、福島県の佐藤雄平知事は「風評被害を助長するような印象で極めて残念」と批判。さらに環境相の石原伸晃氏が「まったく理解できない」と不快感をあらわにし、文科相の下村博文氏も「科学的知見に基づいて伝えることが重要だ」と発言した。これらの批判に対し、井戸川前町長が「私が鼻血を出すことが犯罪とでも言うのか」「人権侵害だ」と噛みつき返すなど、収拾不可能な大騒動に。また、震災がれきを処理した大阪の焼却場の近くで眼などに不快な症状を訴える人が相次いでいるとの描写もあり、これに対しても大阪府と大阪市が「事実ではない」として小学館に抗議文を送っている。

 その一方、表現の自由の観点から同作を擁護する著名人の声も上がり始めている。

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