表現の自由か、風評被害か…『美味しんぼ』騒動の根幹にある“フィクションの境界線”


 ダウンタウンの松本人志は、11日放送のニュースバラエティー番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)で美味しんぼ騒動が取り上げられた際に「作品はみんなで作るものではなく作者のもの」とコメント。さらに「外部の人間がストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしな話なんですよ」と内容に外部が介入しようとしている現状に疑問を呈し、続けて「これに関しては漫画家さんが神、映画に関しては映画監督が神なんですよ。周りがごちょごちょ言って変えろとか言うのは神への冒とく」と言い切った。

 また、タレントの伊集院光は12日放送された自身のラジオ番組で「これを変な風に盛り上げていって、コミック規制みたいのに入るのが嫌なんですよ」と過剰規制になることを危惧。「政治の人たちがいろんな発言をしていく中で、変な盛り上がり方をすると、漫画で言っていいことの話になりかねない」と不安を吐露し、さらに「潜在的にみんなが不安なんだって思うことに関して、漫画に何か言うよりは、政治の人たちはそっちを取り除くにはどうしたらいいんだっていう方をする仕事でしょ。ああいう漫画が出ることが遺憾だって話になっちゃうと…」と至極真っ当な政治家批判を展開した。

 脳科学者の茂木健一郎氏は、13日に自身のTwitterで「一つの漫画の中で、福島の原発事故についてある見解が述べられたからと言って、右往左往する社会の方が問題」とツイートし、読み手のリテラシーに基づいて判断すべきだと主張。さらに、他にも放射能被害などを指摘する作品や言論はあるはずだといい「さまざまな主張が並立するのが民主主義社会というもので、『美味しんぼ』を特別視する理由が私にはわからない」と、とりわけ『美味しんぼ』だけにバッシングが集中している状況に疑問を投げかけた。

 まさに賛否両論といったところだが、この騒動をややこしくしているのは同作が「フィクションか、ノンフィクションか」という問題だ。

 当然ながら、山岡や海原雄山をはじめとする登場人物はモデルがいる場合はあるにせよ架空の存在であり、まぎれもなくフィクションのはずだった。フィクションであれば、その中でどのような主張がなされようが基本的に「表現の自由」であり、個人の名誉を傷つけるようなものでない限り、それを批判するのはフィクションの創造性に一方的な制限を掛けることになってしまう。明らかなフィクションであれば、政治家や自治体の介入は大問題であり、表現の自由を守るためにも同作を擁護したくなる気持ちは十分に理解できる。

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