アップアップガールズ(仮)、聖地・中野へ帰還


 東京と地方で数公演に渡る新春コンサートが終わると、スケジュールは空白。追い打ちをかけるように、中学三年生だった佐保にもエッグ卒業が言い渡された。同時に後にアップアップガールズ(仮)となる、エッグ卒業生ユニットへの加入も薦められたのだった。

 ハロープロジェクトの一員になる形でしかアイドルへの道を考えていなかった佐保はひと月に渡って悩み抜く。高校に進学しそれまで味わったことのない普通の青春を楽しむのも良いのでは、年頃の少女なら当然の逡巡だった。担当マネージャー宛に断りのメールの文面を書き連ね、送信ボタンを押す寸前までいったこともあったという。

 踏みとどまったのは、たまたま見直した楽しそうに歌い踊る自分の姿だった。メールを書き換えた彼女が、当時まだアップフロントガールズと名乗っていたユニットに加入するのは、その数日後の事だった。

 高校に入学したばかりだった彼女も今では卒業シーズンを迎えた。アプガに加入後も、不透明な将来への不安感から幾度か脱退を考えたこともあったという。しかし十数枚のシングルを矢継ぎ早にリリースし、何百回というステージを重ねるうち、以前の自信なさげで物憂げな表情の少女は「疲れのTの字も感じたことはない、人間の限界に挑戦したい」と堂々と宣言し、破壊王のニックネームで親しまれる逞しい女戦士へと成長を遂げた。

 そして3年前スポットライトの陰で哀しみの涙を堪えた中野サンプラザで、今度はきっと煌煌とした光を浴びながら、悦びの涙を浮かべてくれるはずだ。

 共に荒野を切り開いた仲間たちと共に。

(文=ピーピング・トム・ソーヤ)

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