「疑惑のベートーベン」佐村河内守の騒動が“聴覚障害詐称疑惑”に発展


 それにしても、なぜ世間や業界関係者、マスコミがこぞって佐村河内氏のウソにコロリと引っかかってしまったのだろうか。それには「障害」というキーワードが大きく関係しているようだ。

「不況にあえいでいる音楽業界ですが、『盲目のピアニスト』などといった障害者の作品は売上が好調。世間は“障害を乗り越えた天才”というような感動ストーリーに飢えており、簡単に飛びつきます。逆にどんなに音楽が素晴らしかったとしても、昨今はクラシック音楽が低迷していますから売れるのは容易ではない。どうしても、プラスアルファが必要になります。そこに目を付けた佐村河内氏のようなタイプが、障害を詐称して自分を売りだすということは十分にあり得る。それが成功すれば本人だけでなく、テレビ局やレコード会社、出版社や興行関係者など様々な人たちの『メシの種』にもなります。自らのメシの種を潰すようなことは誰もしませんから、周囲も疑念を持たないようになるのです」(レコード会社関係者)

 10年ほど前、重い脳障害を患った少年が文字盤を指さして詩を執筆するという『奇跡の詩人』が大ブームになったことがあった。NHKも特集を組んで大々的に取り上げたが、この執筆方法について「文字盤を持つ母親が息子の手を操っている」との疑惑が浮上。科学的検証は家族によって拒否され、うやむやのまま騒動は終息した。

 それと同じケースとは言い切れないが、感動ストーリーが世間に求められ、売れる商品を欲する業界が安易に飛びついている状況が続く限り、同じような騒動は今後も起きるのかもしれない。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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