あらゆるジャンルを席巻する 芸人たちのマルチすぎる才能

あらゆるジャンルを席巻する 芸人たちのマルチすぎる才能の画像1※イメージ画像:『お笑い芸人就職読本』草思社

 マルチな才能を持った人々が多く活躍する芸能界。中には一体なぜタレント(才能)と呼ばれているのかわからず、ただタイミングが良かっただけという輩もいるが、そんな運もまた才能といえば才能といえる。やはり多くの人が憧れ、挑戦しては失敗する芸能界で、第一線で活躍している人々は、何かしらの才能に恵まれているものだ。

 特に今の芸能界では、芸人があらゆるジャンルで活躍し、テレビをつければ必ずそこに1人は芸人がいるのが当たり前になっている。俳優や歌手、アイドルなど、さまざまなジャンルの人々が活躍する中で、もっとも多彩な才能を発揮しているのが芸人といえる。

 一昔前であれば、とんねるずやダウンタウンといった飛びぬけた売れっ子に限られた他ジャンルへの進出だったが、今ではある程度名前が売れているだけの芸人がドラマに出演し、CDを出すのに何の驚きもない。今や芸人は、バラエティにとどまらず、情報番組の司会をこなす加藤浩次や恵俊彰、スポーツ中継に顔を出す明石家さんまや爆笑問題の田中裕二、選挙特番を仕切るくりぃむしちゅーの上田晋也やロンドンブーツ1号2号の田村淳など、例を挙げていけばきりがないほど。そして、そのほとんどがもはや違和感のないものとして認知されている。

 さらに番組内で流される再現VTRなどにも、知名度のある売れっ子芸人が出演していたりする。ものまね芸人が本人の代わりにというわけでもなく、近頃ではオードリーやハリセンボンの箕輪はるかなど単に出演しているようなケースも目に付き、そこまでする必要があるとは思えないが、彼らは貪欲に仕事をこなしているようだ。

 また、芸人たちはナレーションなども器用にこなし、気づけば、「あの芸人がやっていたのか」と驚くようなこともしばしばある。キャイ~ンの天野ひろゆきや麒麟の川島明などは、本職の人々をも凌駕するような技量を見せる。彼らの才能の豊かさには、ただ目を見張るばかりだ。

 しかし、そんな芸人たちの活動領域の広さは、まるで身内だけで金を回しているような印象を覚え、また芸人の知名度を単に利用したのだろうという場合もある。つまりその芸人でなければならないシーンなら頷けるが、別に誰がやってもそんなに代わり映えしないケースで、大人の事情が絡み、その芸人が採用されているというわけだ。

「たとえばアニメの吹き替えなどで有名芸人さんが起用されることがありますよね。アニメ文化の盛んな日本には多くの一流声優がいるのにもかかわらず、まるで素人の芸人を使うわけです。それはつまり、その芸人を呼ぶことでマスコミを呼び、宣伝に利用しようという魂胆なわけですよ。どんなに一流の声優さんと言っても、マスコミを呼ぶ力では売れている芸人さんに敵いませんからね。プロの声優さんは悔しいでしょうが、より多くの人に周知して、作品を売り込むには知名度のある人を利用するのが手っ取り早いわけです」(業界関係者)

 大人の事情も絡んで幅広く仕事をこなす芸人たち。中には不本意ながら仕事をしている芸人もいるかもしれない。しかし、それでも取り組むのが本物の芸人というもの。何でもやって、その先に笑いを生むのが彼らの使命だ。たとえシリアスな役柄でも、ひとたび仕事をこなした後に舞台に戻り、それをネタに笑いを起こせれば芸人冥利に尽きるというものだろう。逆に言えば、そんなモチベーションがあるから、彼らはあらゆるジャンルで活躍できるのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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