こんな人生に得るところが少ないようで多い映画を製作したのは、ホラーの老舗レーベル「トロマ・ピクチャーズ」の総帥ロイド・カウフマン。かって日本でも大ヒットした『悪魔の毒々モンスター』（84年）シリーズをはじめ、『悪魔の毒々ハイスクール』（86年）や日本を舞台にした『カブキマン』（91年）など、予算少なめ描写はハデハデ、レイティング何それ食べれるの？的な怪作を大量生産し、B級ホラーブームの立役者として幅を利かせた偉大なる人物です。
総帥ロイド・カウフマンは、かなりオイシイ役で登場！ （C）TROMA ENTERTAINMENT ,INC. & ATRON-6 ALL RIGHTS RESERVED.
そんなカウフマンが、カナダを拠点とする気鋭の映像集団＜アストロン6＞と組んで出来たのが、この『ファーザーズ・デイ』という次第。昨年末に公開された『マンボーグ』（11）など、悪趣味だけどどこか憎めないテイストのグラインドハウス系作品を次々と生み出しているアストロン6ですが、ここにきて悪趣味映画の帝王とのコラボという、攻めてるんだか保守的なんだか分からぬ奇跡のような発展を見せてくれます。
そんな経緯もあってこの映画、モラルもへったくれもない悪趣味シナジー効果が大爆発!! ジョン神父がエイハブを探して野山を駆け回ったあげく、コントのようなボロ雑巾姿になり、エイハブはエイハブで警察から逃げるためにムリ目な女装までして、流血の合間には抜作脱力系ギャグがプチ炸裂。そこには詰め込めるモノをとりあえず詰め込んどきゃ、客は喜ぶだろうという往年のトロマスピリッツが息づいています。
思えば80年代は本作のような、キッチュで悪趣味な作品が街中のビデオレンタル店の棚にところ狭しと並んでいました。そんな中には『ホビット』シリーズのピーター・ジャクソンのような才能が埋もれていたのも確かです。玉石混淆の「石」だと思っていたものが意外な「玉」だったなんてこともあるワケで、アストロン6の連中も20年後には、オスカー像を片手にロイド・カウフマンに謝辞を捧げているかもしれません。そんなアルかもナイかもしれない、どちらかというとナイであろう青田買いに思いを馳せながらこうした映画を観るのも、連休の後腐れのない使い方としてふさわしいと思います。
（文＝テリー天野）
◆『ファーザーズ・デイ／野獣のはらわた』＜http://astron-troma.com/＞
監督・脚本:アストロン-６
製作:C＆マイケル・ハーツ
出演:アダム・ブルックス、マシュー・ケネディ、コナー・スウィーニー、エイミー・グローニング、ブレント・ニール
製作年:2011年
劇場:新宿武蔵野館にてレイトショー
公開日:1月11日（土）
上映時間:99分
配給:エデン
※R18+
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