口パクの嵐が最高視聴率、きゃりーが孤立…『FNS歌謡祭』で露呈した生歌路線の限界

20131207PP.jpg※イメージ画像:「もったいないとらんど(初回限定盤)」きゃりーぱみゅぱみゅ/ワーナーミュージック・ジャパン

 4日の生放送で総勢70組以上のアーティストが出演した今年の『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)。平均視聴率18.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)と高視聴率を叩きだしたが、嵐が「Endless Game」を歌った場面が瞬間最高視聴率を獲得したことが物議を醸している。

 今回の放送では、番組の名物プロデューサー・きくち伸氏の大号令により、生歌志向が強まったことが特徴の一つになっていた。きくち氏は今年3月に「歌手であるからにはフツーに歌えることが絶対条件」とブログでも表明しており、今回は口パクの常習であるAKB48やSKE48ですら生歌を披露していた。

 ところが、なぜかVTR出演だった嵐は口パクでカラオケ音源。その嵐が最高視聴率を獲得してしまったのだから、きくち氏の大号令は肩なし状態である。

「アーティスト同士の生コラボが番組のキモになっているだけに、口パクをできる限り排除したいという方向性は理解できます。ですが、それによってアーティスト側が必要以上のプレッシャーを受けているのも事実。アイドル系は歌が下手なメンバーもいますし、激しいダンスをしながらの生歌はライブでもやらないアーティストが多い。嵐がVTR出演だったのも、一昨年の放送で音程を外しまくって赤っ恥をかいたため、今回は『逃げたのでは?』との憶測も流れています。しかし、結局は嵐が最高の数字をかっさらったのですから、全ての歌手に生歌を絶対条件として突き付ける必要があるのか、業界内でも疑問の声が上がっています」(音楽ライター)

 全体の視聴率に関しても、昨年の18.3%は僅かに上回ったが、2010年の21.7%からジリジリと下がり続けている数字を挽回するには至らなかった。視聴者が「音楽番組は全て生歌で聞きたい」と本当に望んでいるのかは微妙なところだ。

 また、この生歌志向の番組作りは意外なところにも影響を与えているという。

「今回の歌手の中では、きゃりーぱみゅぱみゅが唯一といっていい口パクで出演していました。彼女の場合、デジタル加工された歌声が『完成型』であるため、人前で披露する際は全て口パク。生歌にすれば別物になってしまうため、仕方のないことです。しかし、出演歌手の中にはリハ中などに『あの子は口パクだから楽でいいよね』『歌手として恥ずかしくないのか』などといった陰口をたたく人がおり、きゃりー本人も何となく居心地悪そうにしています。生歌だから偉いってもんでもないでしょうに…」(テレビ局関係者)

 きゃりーは放送当日、自身のTwitterで「人見知りだからアーティスト大集合みたいなやつ苦手。爪のゴミとか見てる」とツイートしたことが話題になった。単に人見知りというだけでなく、口パクの負い目が他のアーティストとの間に溝を生んでしまっているのかもしれない。

 人気バラエティー『ほこ×たて』がヤラセ問題で打ち切りになるなど、視聴者を欺くことで信頼を失っているフジ。きくち氏の肝入りで始まった音楽番組の生歌路線は誠実に視聴者に向き合うための秘策ともいえるが、数字的には微妙な審判が下っただけに、果たして本当に支持を得ることにつながるのだろうか。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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