歩くこと5分、まだホテルには着かない。そりゃそうである。歌舞伎町から西新宿のホテル密集地域までは近いようで結構離れているのだ。あまり待たせてはならないと、途中から小走りでホテルに向かう筆者。
そしてようやくホテルに到着。建物に入る前に、外の喫煙所で一服しながら「ホテルの前に着いたので、今から向かいますね」とメールを入れる。
この手のホテルは禁煙ルームが多いので、今のうちに吸っておかねばなるまい。逸る気持ちを抑えながらニコチンを味わう筆者。そして、煙草を一本吸い終わってからホテルに入っていった。
フロントを素通りしてエレベーターに乗り込む。そして、彼女の部屋があるフロアで降りると、鞄から口臭消しスプレーを取り出してシュシュっと口内に吹きかける。長年に渡ってしみ込んだニコチン臭がそのくらいで消えないことは百も承知だが、最低限のエチケットは守るべきだろう。
佐藤浩市や真田広之のような渋い中年ならニコチン臭も似合いそうだが、しょせん筆者はイケメンとは真反対に位置するキモいオッサンである。それゆえ、自ら必死になって女性に嫌われそうなポイントを潰していくしかないのだ。
トントン……
部屋の前に到着し、ドアをノックする。
ガチャ
扉が開けられた。そしてそこには写メで見たまんまのリンちゃんが立っていた。
「こんばんは、リンちゃん」
「ど、どうも」
「こんなんだけど、平気かな?」
「あ、はい」
「ありがとう。じゃ、お邪魔するね」
部屋に入ると、メンソールの煙草の残り香が漂っていた。素早く目を走らせると、ベッドの脇のサイドテーブルに吸い殻が転がっている灰皿を発見。
「あ、リンちゃんも煙草を吸うんだ」
「はい。ショーイチさんも吸うんですか?」
「うん。かなりね。禁煙ルームじゃなくてホっとしたよ」
先ほど煙草を吸ったばかりではあったが、ここは一服しながらリンちゃんと打ち解けるためにしばらく会話に徹するべきだろう。
「じゃ、俺も一服していいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
まだリンちゃんも緊張しているようであった。いきなりエッチに持ち込んでいたら、さぞかししょっぱいエッチになったハズだ。
「出張って言ってたけど、よく東京には来るの?」
「そうですね。年に3、4回くらいですかね」
「へぇ、結構来てるんだね」
「はい。マネージャー研修に参加しなきゃいけないんで」
「ふぅん、お仕事大変そうだね。マネージャーってエリアマネージャーとかそういった感じなの?」
「え、なんでわかるんですか?」
「へ、俺なんか変なこと言った?」
「だってエリアマネージャーって言うから……」
「あ、ビンゴだった? いやたまたまだよ」
「そうなんですか」
「うん。で、なんの職種なのかな? あ、別に言わなくてもいいけど」
「じつは私、パチ屋のエリアマネージャーなんです」
「え!! その若さで凄いね!」
「は、はい。なんか社長に気に入られちゃって」
「だよねぇ。だって普通はもっと年のいった男の人がやってそうなイメージがあるもの」
なんでも彼女は東海地方のエリアマネージャーなるものをやっているとのことだった。給料はそこそこいいものの、ロクに休みも取れず遊ぶヒマもないらしい。それゆえ、東京に出てくるとハネを伸ばしたくなるんだそうだ。
あいにく筆者はパチンコなどのギャンブルには興味が無かったが、なんとか持てる知識をフル動員して彼女との会話を続行。
「じゃあ、チェーン店の店長とかに指導とかする立場なのかな?」
「はい、そうなんですよぉ」
「そりゃ大変そうだね。店長とかってみんなリンちゃんより年上なんじゃないの?」
「はい。だから色々と大変です」
「だろうねぇ。物凄く大変そうな仕事を頑張ってるんだね」
「そうですね。最近やっと慣れてきたかなぁって感じです」
そんな会話を10分くらい続けた後、筆者のほうから切り出した。
「じゃ、そろそろ楽しくエッチしよっか!」
「あ、は、はい」
「ね、リンちゃんはどんなエッチが好きなのかな」
「え、べつに普通ですよ」
「そっかぁ。じゃあ攻めるのと攻められるのどっちが好き?」
「優しく攻められるのが、好きです」
「よっしゃ、俺そういうのが一番得意だから任せておいて!!」