『アメトーーク!』の功罪 量産される○○芸人たち

1129ametalk_main.jpg※イメージ画像:『アメトーーク!DVD 27』よしもとアール・アンド・シー

 27日、お笑い芸人のおさる(45)が、東京新聞主催の『第35回 東京書作展』で3,000人の応募の中から「部門特別賞」に選出されたとして各種メディアをにぎわせた。かねてより芸人としての活動より、書道にいそしみ、2011年には同書作展で優秀賞、2012年には特選に選ばれていたおさる。その活動は知る人ぞ知るというものであったが、今回の受賞により、ようやく日の目を見た格好となった。

 おさるといえば、芸能界きっての器用貧乏としても有名。『スポーツマンNo.1決定戦』(TBS系)や『SASUKE』(同)では常に上位に食い込む筋肉タレントとして活躍し、海外ロケではコーディネーターを必要としないほど英会話は達者。さらには音を出すことすら難しいといわれるヴァイオリンも難なく弾きこなす器用さを兼ね備え、持ち前のバランス感覚で大道芸も得意とする。そして今回特別賞を受賞した書道と、おさるというタレントはまさに才能の宝庫といえる。

 しかし、それだけの才能を持ってしても芸人として売れるかどうかはまた別の問題。なんでも器用にこなせても、タレント性という才能がなければテレビで活躍することはできないのだ。とはいえ、ここ数年、テレビバラエティは、お笑い以外の付加価値を持った○○芸人たちが大活躍。家電芸人や手相芸人のように趣味や特技を活かした○○芸人ならまだしも、中にはスピリチュアル芸人といった、そもそも一体何がしたいのかわからない輩もいる。芸人というからには、そこに笑いがあるのかと思いきや、それが皆無なのだから始末が悪い。

「やはり『アメトーーク!』(テレビ朝日系)による“くくり芸人”というのが大きなきっかけでしょう。芸人さんの意外な一面を披露するという意味で始められた企画ですけど、その影響力は業界内外ですさまじいですからね。くくりとして取り上げられたテーマは、『天下一品』にしろ『ジョジョの奇妙な冒険』にしろ、あらゆるものがヒットしています。その効果はすでに折り紙つきですから、企業サイドも、くくりテーマによっては自社のアピールに起用するわけです。家電芸人なんか、まさにその典型例ですよね。つまり、そうした○○芸人という付加価値があることによって、芸人さんは仕事を得ることができるようになったわけです。その流れが続いて、今でも○○芸人という肩書きの若手が多く出てきているのでしょう。たとえばギャンブル芸人として売り込めば、テレビの仕事はなかなか難しいにしろ、スポーツ新聞などの連載を得やすい。これからの若手が中堅芸人の数多いるテレビで活躍するのは大変ですが、分りやすい特徴をつけることによって仕事につなげているというわけです」(業界関係者)

 企業サイドの思惑もあって次々と出てきているという○○芸人たち。もちろんこれは芸能事務所が仕掛けている営業方法でもある。しかし、元はと言えば、○○芸人というのは、個々の芸人の趣味や特性、特技を披露する場であったはず。そこに企業や事務所が目をつけて、今では金を生むための○○となっていることも多い。芸人本人としても、それがきっかけで名前が売れ、さらなる活躍の起爆剤となるに越したことはないのだろう。だが、企業に利用されるだけではただの消耗品となってしまう。たとえそれがテレビ番組でも、○○芸人としてだけで呼ばれていては、やがて視聴者に飽きられ、見切りをつけられるのは目に見えている。そうなってしまえば、損をするのは他ならぬ○○芸人たちだ。それを避けるためには、やはり○○の根底に笑いを忘れないことだろう。それが徹底されていればケンドーコバヤシのように売れるに違いない。書道家として注目を集めるおさるだが、墨汁に笑いを混ぜなければさらなる飛躍は難しいだろう。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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