病める獅子・AKB48を追いつめるモー娘。と乃木坂46の猛追撃

 モーニング娘。の1月23日発売の52ndシングル「Help me!!」(zetima)。CMやドラマのタイアップもないこの曲が、Youtube公式チャンネルに公開されて1週間で再生回数100万を越え、モー娘。として3年8カ月ぶりに、オリコンの週間ランキング(2013年1月21日~27日のCDシングル週間ランキング)で1位を獲得した。

 最近のモー娘。といえば、バラエティ番組出演の比較的多い道重さゆみと、卒業を発表しているエース格の田中れいな以外のメンバーは、2011年以降に加入したこともあってまだ知名度があるとはいえない。だがその代わりにフレッシュさがあり、ダンスなどのパフォーマンス力も着実につけてきている。今回の曲のPVでは、複雑なフォーメーションで難易度の高いダンスを披露しており、つんく♂の楽曲の完成度・インパクトとも高く、まさに“曲の力”でもぎ取った1位といえそうだ。

 ネットでも、根強いモー娘。ファンは当然として、動画サイトでこの曲を見たライト層が、次々にTwitter(ツイッター)やフェイスブックでこの曲を紹介しており、昔モー娘。が好きだったという30~40代の男性や、20代の女性を中心に口コミで広がっている。

「いや、そうはいっても、全国握手会を乱発し、バージョン違いを何枚も出しているドーピング作戦ですから、所詮蟷螂の斧ですよ。翌週のランキングでは、初週50万枚を売り上げているSKE48の新曲『チョコの奴隷』(avex trax)が大差で1位をとるでしょう」(アイドルライター)という声もあるが、「モー娘。の握手会は、AKBと違って高速握手会(※握手する時間が短い)ですし、幕張メッセなどの大会場を借り切って何日も行うAKBのようにイベントとして独立しているわけではなく、あくまでも販促の一環。それでこの結果はすごい」(業界関係者)という声もある。

 1999年に発表した「LOVEマシーン」(zetima)で大ブレイクしたものの、度重なるメンバーチェンジでいつしかムーブメントは去り、音楽番組に出演することもすっかり少なくなっていたモー娘。だが、AKB総合プロデューサーの秋元康が、2012年06月17日放送の『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)で、「楽曲的なクオリティは、今までのアイドルの中ではモー娘。が最高峰だと思います」と認めているように、乱立するアイドルグループの中で音楽性は頭一つ抜けている。放送作家出身で売り出し方に工夫をこらす秋元と、ミュージシャン出身で楽曲の質を重視するつんく♂の方向性の違いは、実は対立軸ではなく、AKBとモー娘。を相互補完する関係であるともいえる。

 AKB48が前田敦子卒業後に「第二章」と呼ばれる時期に突入し、アイドルの成長過程を楽しんでいたファンがクオリティの完成度を求めるようになることを考えると、再びモーニング娘。をはじめとするハロー!プロジェクト勢が勢いを取り戻す可能性も決して低くはない。

 また、AKB48の公式ライバルとして11年に誕生したものの、まだ売上・知名度両面でAKBの「ライバル」とはとても言えない乃木坂46も、今年は成長が期待できる。人気ナンバーワンメンバーの生田絵梨花が月9ドラマ『ビブリア古書堂の事件手帖』(フジテレビ系)に単独初出演が決まったことが、まだ特定のアイドルファンしか食いついていなかった彼女たちの知名度を上昇させる大きなチャンスになりそうだ。

「乃木坂は秋元康お気に入りの生駒里奈がずっとセンターポジションを務めているものの、実人気は生田や美形キャラの白石麻衣らの方が上。生駒プッシュだけでなく、そうした他のメンバーも本格的にテレビ露出させて、乃木坂全体の底上げにしていくと思います。すでに白石麻衣はフジテレビの競馬番組でAKB小嶋陽菜と一緒にレギュラーMCを務めています。また生田はコネやバーターでなくきちんとしたオーディションを受けて合格しての出演だそうですから、今後の女優業も期待できますね」(前出・業界関係者)

 ちなみに乃木坂はこれまで4枚のシングルをリリース済みだが、いずれも累計20万枚以上を売り上げている。モー娘。も現在の勢いがあれば、乃木坂クラスの売り上げはすぐに達成できるかもしれない。次は打倒AKBだが、昨年まではミリオンヒットを連発するお化けグループだったAKBも、スキャンダル連発で明らかなファン離れが起こっており、いつこれらグループに追い越されてもおかしくはない。アイドル戦国時代が大きく動き出したようだ。
(文=潜水亭沈没)

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