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私もこうして騙された! 洗脳された女性の末路


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※イメージ画像 photo by Anita Luchies from flickr

 連日メディアを賑わしているオセロ・中島知子の家賃滞納騒動。怪しい霊能者による洗脳はかなり深刻なようで、関係者の誰もが自力での復活は難しいと言っている。各メディアはそんな中島の状態をどこか異世界の出来事のように報じ、視聴者の多くもまた対岸の火事と思っている節があるだろう。しかし、現実はというと、そんなことはない。あなたの側にも、いつ怪しい霊能者がやってくるかわからない。実際、記者の周囲にも洗脳された経験のある人物がいたので、今日はその話を少ししたい。

 彼女の名前は高木千賀子(仮名)。歳は40代半ば。長い髪を少しだけ茶色に染める彼女は、スタイルもよく、いわゆる美魔女風の美人。現在、会社員として働く彼女は、都内のマンションで娘との2人暮らしをしている。今は幸せだと語る彼女だが、十年ほど前はある女性の完全なマインドコントロール下にあったと記者に話してくれた。

 高木さんがその女性と出会ったのは、1990年代後半のこと。当時、高木さんは夫と娘と3人暮らし。夫は、若くして会社役員にまで上り詰めた、いわゆるやり手のエリートサラリーマンで、都内一等地のマンションに居を構える家族3人は、何不自由なくセレブな生活を送っていた。そんな家族に亀裂が生じたのは、高木さんがある女性を家に連れ帰ったことに始まる。

 その女性(麻生恵美・仮名)と高木さんの出会いは、友人の紹介だった。よく当たる占い師がいると教えられて連れて行かれたファミレスだったという。はじめは単純な手相占いや姓名判断をされたという高木さんだが、何か言い当てられたような気がして、その後も麻生の下に通いつめることに。いつしかプライベートでも会うような仲になった2人は、普段から飲みに行き、温泉旅行を楽しみ、親友のような関係になったという。今考えてみれば、その当時の勘定は全て自分持ちだったと高木さんは振り返る。

 「金品を求められたことはない」と語る高木さんが、麻生の毒牙にかかったのは、自分から100万円という大金を渡したことがきっかけだったという。

 麻生との交際が始まって半年あまり経過したある日、高木さんは麻生から悩みを打ち明けられた。その内容は、「家賃を滞納している」というものだった。占い師という職業柄、収入が不安定で、最近アパートの家賃を払えないというのだ。そんな麻生を不憫に思った高木さんは、夫に無断で貯金を下ろし、「これで、清算したらいい」と100万円を渡した。しかし、麻生はその大金を受け取らなかったという。そんな出来事を振り返りながら、高木さんは「あれで完全に信じた」と漏らす。

 なんとかアパートの家賃も払えたという麻生に連れられて、彼女の住むアパートを訪れた高木さんが目にしたのは、ボロボロの木造アパートと同居する母と弟。高木さんは、とにかく衝撃的だったとその光景を振り返る。老いた母は生気がなく、その横で自堕落に寝ている弟。高木さんは、その一家を我が家に迎えることを決心した――。

 「一番驚いたのは夫じゃないかしら」会社から帰ってきたら、知らない老婆と怪しい女とやる気のない若い男がいるのだ。驚くなんてもんじゃないだろう。高木さんの説得もあって、しばらくは夫も我慢していたというが、嫌気が差すのは時間の問題だった。マンションの権利や貯蓄など、全ての権利を高木さんに譲渡するという条件を呑み、夫は家を離れた。夫が出した唯一の条件は、娘の養育を高木さんの実家に任せるということだった。
 
 そうして始まった高木さんと麻生とその家族との生活。すでに完全な洗脳下にあったと思われる高木さんは、何を食べるにも麻生に聞き、麻生の言う「神様からの言葉」に従ったという。近頃世間を騒がしているオセロ・中島の洗脳騒動でも、霊能者による「神の計画」というものが報じられているが、「まったく同じ」と高木さんは振り返る。高木さんと中島を洗脳した人物が同一人物かどうかはわからないが、その手口は聞けば聞くほど似ている。

 洗脳の手始めは、「神様はこう言ってますけど、どうしますか?」という言葉。大して重要でない事柄、たとえば、何を食べるかや○○に行く方法など、まあどちらでもいいということに関して、インチキ霊能者はこの言葉を使う。どちらでもいいのだから、神様が言ってるならそうしましょうとなるのは人の常というものだろう。まして、高木さんや中島は、その霊能者を信用している。次第に、どんなことでも「神様の言葉」を使う霊能者に従う彼女たちの思考能力は徐々に低下していく。

 完全な依存。これがマインドコントロールの本質だ。そうして、洗脳された高木さんは神の計画の下、生まれ変わることを指示され、全身の毛を剃り、毎日毎食肉を食べたという。そして毎晩のようにカラオケに行き、「神がかり的にうまかった」という霊能者の歌声を聴く。「まるでプロのソプラノ歌手。いや、むしろそれよりうまかった」と高木さんは霊能者の歌声の印象を振り返る。そして、時折出かける麻生は、中居正広や三國連太郎といった大物芸能人に会いに行くと言っていたらしい。どうしようもない嘘に違いないが、当時の高木さんは、「そんな人とも繋がりがあるんだ」と感心していたという。

 それでも、高木さんは金品を要求されたことはなかった。実際の被害額は、マンションや預貯金など数千万に及ぶものの、その全ては自ら進んで使ったものだったと彼女は語る。そんな彼女が麻生の呪縛から抜け出せたのは、借金返済のため(すでに高木さんは借金をしてまで麻生らに使っていた)売り払ったマンションを出て行く日、残高0円の通帳を見たときだったという。

 独身時代と合わせて結婚してから貯めていた1,000万円ほどのお金が全てなくなっている。振り返れば、確かに自分で散々下ろしていた。そのほとんどが麻生との飲食費。そして、その麻生はもういない。娘に会いたい――。高木さんは実家に向かい、娘を抱きしめた。

 まだ短い髪の毛のまま仕事を見つけた高木さんは、会社員として働き始め、夜はテレクラでバイトをした。まだ残っている借金を綺麗にして、再び娘と暮らすために彼女は必死で働いた。そうして、今は娘と2人で幸せな生活を送っている。

 高い壷を買わせたり、布施などと称して金を取るわけではないインチキ霊能者。むしろ現金に関しては受け取りを拒否している。現在報道されている中島のケースに関して詳しくはわからないが、その手口や被害の状況は高木さんのケースとよく似ている。きっと中島からインチキ霊能者への金銭のやり取りはないだろう。そんな自称・霊能者の目的は、一般の感覚からは理解できない。まだ金を騙し取る似非新興宗教のほうが理解できるというものだ。高木さんは、「とにかく食欲が凄まじかった」とその女霊能者を振り返ったが、ただ食べるためだけに、人の生活を破綻させたというのだろうか。

 資本主義社会に住み、自由の国で暮らすわれわれには、一般的に共通する"普通"の感覚がある。たとえば、金儲けをしたいとか幸せになりたいといった感覚だ。そういった感覚は誰にでもあるものだろう。しかし、中島や高木さんを食い物にしたインチキ霊能者には、そういった感覚が欠如しているように思う。つまり、人を騙しておきながら金銭を要求しないという点は、すでにインチキや悪徳という、こちら側の非難を受け付けないものにしてしまうのではないか。そもそも住む世界が違う相手に、既存の法律や制度を適用させるのは難しいのかもしれない。

 オセロ・中島の親は、人身保護請求という制度を使い、娘と霊能者を引き離した。しかし、その後中島は自らの足で霊能者の下に戻っている。中島にとって、その霊能者は親よりも大切な存在になっていたのだろう。自由意志や人権というのもまた、われわれの世界に共通する"普通"の感覚だ。中島が自分の意思で霊能者を必要とするなら、それは誰にも止められない。しかし、それがマインドコントロールというものなのは明白だ。気付いていないのは本人だけといえるだろう。そこから抜け出すには、本人が何かをきっかけに気付くしかない。高木さんにとってそのきっかけは、底をついた通帳と最愛の娘だった。中島も、どうにか早くきっかけを見つけて欲しいと願う。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)


『洗脳原論』


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