好きな司会者1位のくりぃむ上田に学ぶ「人のあしらい方」

※イメージ画像:CD+DVD『それでも信じてる/ラブレター』
ファンキーモンキーベイビーズ/Dreamusic

 22日、『ORICON STYLE』がテレビバラエティで活躍する『好きな司会者ランキング』を発表した。見事1位に輝いたのは、昨年4位だったくりぃむしちゅーの上田晋也。同調査で、前回前々回と首位を堅持していた引退した島田紳助の後継が誰かと話題になる中、上田が他の候補者を退けた形となった。

 このニュースに対して、ネットユーザーたちは、「まあ、無難w」や「好き嫌いは別にして安定感がある」「面白くはないけど司会はうまい」などと反応。世間的にいえば、キャスターなどもこなす彼は、すでに(ピンの場合)芸人ではなく、司会者と受け止められているのかもしれない。

 思い返せば、引退した紳助も、紳助・竜介解散後、「自分は芸人ではなく司会者だ」と公言していた。どこからが芸人でどこからが司会者かという線引きは非常に難しいが、もともとコンビで漫才やコントをしていた芸人にとって、1人で仕事をこなす場合にはスイッチの入れ方が違うのかもしれない。彼ら(上田や紳助という司会業をこなすタレント)にとって、純粋に芸人としていられるのは相方といるときだけなのだろう。このことは、上田が相方である有田哲平と一緒に出演している番組とそうでない番組を見れば明らかだ。有田からのムチャぶりを受けてのみ、上田は相方を活かすスベリ芸を見せるのだから。

 つまり上田は出演する番組(有田の存在の有無)によって、芸人と司会者の両方をこなすことのできる稀有なタレントといえる。そしてそんな上田の司会術は、巧みに人をあしらうことによって成り立っている。

 たとえば、マツコ・デラックスのK-POP批判発言で話題を集めた『なかよしテレビ~日中韓!ホンネで言いたい放題SP!~』(フジテレビ系)で、上田は見事に出演者たちをあしらった。

 出演した韓国人が自国のエンターテインメントを賞賛しているのに対し、マツコが「嫌だったら出てけ!」「受け入れてやってんだよ!」と叫ぶと、上田は、そのマツコに対し「一回、血圧だけ測ってー」とツッコミを入れる。興奮して息の上がっているマツコに向けられたこの言葉は、見事にその場の笑いを誘い、これ以上どこに怒りの矛先を向けていいか迷っていたマツコ自身ももはや笑うしかなくなる。

 また、アンジャッシュの渡部建が、中国サイドに対して「リーダーになるには早い」と発言し、中国人が「チャーハン食べさせない!」と反論すると、上田は「渡部さん。残念ですがもうチャーハンは食べれません」と興奮する中国人に便乗して笑いを取った。もちろんこれは「チャーハンを食べさせない」という中国人の発言があまりにも荒唐無稽で、現実離れしているから発せられたものといえる。そうして上田に乗せられた中国人は、満足気に座るしかなくなる。

 さらに、アグネス・チャンが「ジャッキー・チェンが友達」という発言をすると、上田は「さりげなく自慢をぶち込んできましたね」と強めのツッコミを見せた。しかし、アグネスにとっては、自分の発言に誇りを持っているから、いくら強めのツッコミでもビクともしない。むしろ、そうした反応は願ったり叶ったりというところだろう。

 これらを見てみると、上田のツッコミが、発言者の自尊心を傷つけないように配慮されているのがわかる。自分を見失った人にはさりげなく着地点を用意し、興奮した人間にはさらに上から便乗してその興奮を沈め、自慢気な発言には鋭くツッコミながら自尊心をくすぐる。そしてもちろん全ては笑いに向かっている。

 つまり上田晋也という司会者の優れている点は、発言者のプライドを傷つけないようにあしらう技にあるといえる。そしてそんな司会者に対して出演者たちは不快感を感じない。視聴者は、その関係性に安心感や安定感を感じているのだろう。絶妙に出演者の自尊心を操る上田の司会術は、確かに好きな司会者No.1の称号にふさわしい。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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