ビートたけし「暴力団との関係」を語ったウラ事情

 9月21日発売の「週刊文春」(文藝春秋)でビートたけしが「暴力団との関係」を赤裸々に語り、大きな話題となっている。暴力団との交際が原因で島田紳助が引退したことにより、芸能界と暴力団の関係がクローズアップされ、どのタレントもヤクザとの関わりが明らかになることにおびえるようになった昨今、なぜあえて暴力団との関係を自ら語ったのか。

 記事では、フライデー襲撃事件後に復帰した際に「復帰が早すぎる」として右翼団体に街宣をかけられたことがあると明かしている。紳助が暴力団と関係を持ったきっかけは、同じく右翼団体に街宣をかけられ、その解決を渡辺二郎を通じて暴力団に頼んだことだった。しかし、たけしは右翼団体の関係先である住吉連合会の堀政夫会長をひとりで訪ね、土下座して謝って解決したという。この点が紳助とは違うとして、「タレントとして、そういうのを上手くやって逃げるのも本人の芸」「紳助は逃げる芸がなかった」と語っている。

 また、10年ほど前に、ある芸人(※文春は中田カウスだと断言)の策略によって山口組の渡辺芳則5代目組長と無理やり面会をさせられたこともあるという。さらに、稲川会からのプレッシャーにより初代会長・稲川聖城氏との面会を断れなくなり、月刊誌「新潮45」(新潮社)で対談したこともあった。

 三大指定暴力団のトップすべてと面会したという事実を公にしながらも、たけしは紳助と自分は違うと強調。「紳助が悪いのは、一番肝心な『ヤクザにモノを頼む』っていう大失敗をしでかしたこと」と語り、ヤクザからのアプローチがあっても一線を超えてはならないと持論を展開した。

 10月1日から東京都でも「暴力団排除条例」が施行され、暴力団と関係がある企業や個人は「密接交際者」として名前が公表される。同条例について、たけしは「その条例は、本当に嬉しくてしょうがねえよ」「これからは条例を盾に(暴力団からの誘いを)断れるんだから、本当にありがたい」としながらも「芸能界全体としては、スパっと切れねえだろうな」と語り、舞台に立っている芸人などはヤクザとの関係を完全に断つことは難しいと分析している。

 今回の記事は、たけし流の「アウトか、セーフか」の線引きを示した告白といえる。組長との面会や葬儀への供花などはしているが、金銭の授受やトラブル解決を頼んだことはないと断言しており、これがたけしにとっての”生命線”ということだろう。自らの保身という面もあるだろうが、本人が望まなくともヤクザとの関係が生まれかねない芸能界全体への助け船といった側面も見えてくる。

 たけしといえば、浅草の舞台からテレビ界の寵児に上り詰める過程で暴力団とズブズブになった芸人をたくさん見てきたに違いなく、たけし軍団にも暴力団員の息子や元暴力団関係者がいるという。

「父親が暴力団員で有名なのは、コメンテーターや司会もこなすGですね。本人も昔は相当のワルだったらしく、酒井法子事件のときに『覚せい剤はいけません』とコメントしていたGに対し、たけしが『お前も覚せい剤売ってたろ!』とテレビに思わず突っ込んだというエピソードがあります。怪談話を得意とするTは、山口組傘下の右翼団体に所属していた過去があり、フライデー襲撃事件の際には『あまりにもヤバ過ぎて何をするか分からない』という理由で襲撃メンバーに呼ばれませんでした。たけし軍団は『はみ出し者の集団』として結成したとたけしも語っていますから、アウトローに対して一定の理解があるのでしょう。そういった態度がヤクザに好かれて、誘いが絶えないのかも知れませんね」(週刊誌記者)

 引退した紳助をはじめ、暴力団とのズブズブの関係がささやかれる中田カウス、山口組系組長とを兄弟盃を交わした横山やすしなど、ヤクザとの距離の取り方を誤ってしまったタレントたちは多い。とはいえ、暴力団からの誘いを無下にすれば、さらなるトラブルを招くことにもなる。ヤクザの顔を立てつつ一線を超えないという生き方は、30年以上も芸能界のトップで活躍しているたけしが身に付けた処世術なのかもしれない。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

『アウトレイジ』

 
ヤクザを知り尽くしているからの今作

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