大橋のぞみ・加藤清史郎・芦田愛菜、次はだれ? アイドル化する子役の未来

 ここ数年毎年のように入れ替わる人気子役たち。2008年は大橋のぞみが歌にCMにと年収1億円以上と言われる活躍を見せ、2009年には大河ドラマ『天地人』(NHK)をきかっけに天才子役の名を欲しいままにした加藤清史郎が登場。昨年から徐々に人気に火がつき、先クール放送のドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ)で最年少連続ドラマ主演という記録を打ちたて、今や子役といえば彼女の名前が上がるほどの人気を獲得した芦田愛菜など。人気子役たちのイス取りゲームは年々激しさを増すようだ。そんなスター子役について、ある業界関係者はこんな風に指摘する。

「昔からテレビや映画の業界では、どんな名優でも”子役と動物には勝てない”という格言があります。演技ということ自体を理解できていない子役や動物は、それだけ自然体でカメラの前に立てるということですよね。大人の俳優にしたらなんとも羨ましい境地にいるということになるのかもしれませんが、ただの自然体である子役や動物たちというのは、それだけ人々に飽きられやすくもあります。アザラシのタマちゃんとかウタちゃんというのがその最たる例と言えます。しかも動物と違って人間の子役は日々成長著しいですからね。ほんのちょっと見なかった間にまるっきり印象が違ってしまう。そうなると視聴者はなんだか妙な違和感を感じます。だから子役は短命なのです。今大人気の芦田愛菜ちゃんも今年いっぱいが活躍期間でしょう」(業界関係者)

 さらにこの関係者は子役とアイドルの違いについてこう語る。

「子役と同じく芸能活動が短命だと言われているのが女性アイドルです。特に10代から活躍しているアイドルは、そのアイドルとしての魅力以外に次々と新しい魅力を見つけ出して売り込んでいかなければ芸能活動を継続するのは難しいと言われています。ただ、子役と違ってアイドルというのは、そもそも仕掛け人が仕込んだ作り物と言えますからね。延命することは十分可能です。仕掛け人の力が絶大であればあるほど、大人の事情というやつが絡んで、すでに落ち目であるのに人気があるように見せることは可能でしょう。特に今の成熟した芸能界では偏った力学が定着してますからね。誰それの言うことは絶対という形でメディアは作られていますよ。しかし子役というのは、そんな作られたアイドルとは違って自然発生的なものですから、いつどんな子が人気者になるか分かりません。そしてそれゆえ子役は短命なわけです」(前出)

 この関係者は子役を短命と言い切るが、古くは『おしん』(NHK)の小林綾子や『家なき子』(日本テレビ系)の安達祐実など、今でも女優を続ける子役出身者は多い。ただ、当時の人気が今の彼女たちにあるかと言えば、そこには疑問符が付く。やはり前出の関係者が指摘するように、人気の凋落という意味では子役は短命と言わざる得ないのかもしれない。

 人気のある子役ほど大成しないというのはよく言われる。前記した小林や安達もその範疇に入るだろう。さらに海外に目を向ければ、『ホームアローン』(20世紀フォックス)のマコーレー・カルキンなども、その代表的な存在だ。しかし一方で、ここ数年、国内外問わず子役出身という俳優が活躍している現実もある。

 たとえば、現在16歳になった『アイ・アム・サム』(松竹)のダコタ・ファニングは、今春日本で公開された主演作『ランナウェイズ』(クロックワークス)で大胆なベッドシーンに挑戦、スター子役という殻を見事に脱ぎ捨てることに成功。今後、大作映画への出演が相次ぐという話だ。さらに、『ハリーポッター』(ワーナー・ブラザーズ)シリーズで世界的人気スター子役となったエマ・ワトソンは、実写版『美女と野獣』など、すでに数本の主演映画が決まっているという報道もあり、大女優への道を着実に歩んでいると言えるだろう。現在公開中の映画『ブラック・スワン』に主演しているナタリー・ポートマンなどもスター子役から大女優へと駆け上がった逸材といえる。そして国内に目を向ければ、NHKの朝ドラで人気子役だった井上真央や14歳で子どもを産む役を演じた志田未来なども子役出身でありながら、大成しつつある女優として挙げられるだろう。

 前出の関係者は、そもそも演技というものが実践できない子役はそれゆえ自然体でカメラの前に立つことができ、その自然体こそが人気の秘訣で、かつ短命のゆえんと指摘した。しかしここ数年続く子役たちの大成という現実は、その子役の概念そのものを変化させているのかもしれない。つまり、才能や個性という潜在的な素材は別にして、子役も作られたものになりつつあるということだ。そして大人たちによって作られ商品と化した子役は、息長く芸能界で活躍することができる。その方が商売になるからだ。

 一時、スター子役として絶大な人気を博し、現在では泣かず飛ばずの活躍しかできないタレントを見るとどこか哀れむような気持ちになる。また、大人たちによって計画的に大成することを目的とした子役タレントというのを見ると同じような気持ちになる。実際、活躍する子役には、本来の子役そのものの魅力が必要不可欠であるから、そのような大成を目的とする雰囲気は微塵もないにしろ、まるで作られたアイドルのように仕掛けに仕掛けを重ねていく姿は、本来の子役の魅力とはかけ離れたものに映ってくる。

 今後、芦田愛菜という子役がどんな活躍するかは分からないが、遅かれ早かれ今の彼女のポジションに新たなスター子役が居座るのは間違いない。その椅子に座るのがどんな子役なのか、視聴者はしっかりと見定める必要がある。願わくば大人の思惑というものから程遠い子役の出現を歓迎したい。

(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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