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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】 第37回

「余生ないので、スリを辞める心構えができた」前科18犯、79歳の常習累犯窃盗の男


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※イメージ画像 photo by matiasjajaja from flickr

 裁判所のロビーに置いてある本日のプログラム「開廷表」をめくると、たまに<常習累犯窃盗罪>という罪名を見かけることがある。この罪名で起訴されるには文字通り、常習として窃盗罪or窃盗未遂罪を犯しており、今回の起訴以前に3回以上、懲役6月以上の判決を受けていることが条件だ。被告人は盗みの猛者たちが多いが、中でもこの被告人は際立っていた。

 Nは、公判時79歳のおじいちゃん。ハゲた坊主頭にべっ甲のメガネ、黒いタートルにデニムと、シャレた格好だ。起訴状によれば、電車内でのスリで、現行犯逮捕されたという。

 前刑(もちろん同じ常習累犯窃盗罪)での服役を終え、府中刑務所から出所したNは、作業報奨金7万円を片手に山谷のドヤ街へ。ここで寝泊まりしつつ、平和島競艇などで金を使う日々を過ごしていたところ、あっという間に所持金が500円に。そこでスリをしようと埼京線に乗り込んだ。脳溢血のため、体の動きが鈍ってしまったので女性を狙おうと、若い女性の鞄から化粧ポーチをスッたところ、あっけなく逮捕されてしまう。財布と間違えてスッた化粧ポーチ(時価300円)の中に金はなし。出所してから2カ月後のことだった。

 金がなくなったからスリでもやろうか......というこの行動が示す通り、Nはスリのプロで前科18犯。新潟生まれだが、昭和23年に家出をして大阪へ。面倒を見てくれた中国人からスリの方法を教わり、それ以降、スリで生活するようになったという。前科のほとんどは電車内でのスリ。人生のうち38年を刑務所で過ごしているというから、その辺の凶悪犯よりトータルの服役期間が長いことになる。本人も「手っ取り早く現金が手に入る」とスリについて供述しており、もはや仕事という体で、ここまでくると清々しささえ感じてしまう。

 ところで、被告人は出所してすぐに山谷のドヤ(1泊2500円)に泊まっていたというが、このとき所持金は7万。出所から2カ月後の逮捕時、所持金は500円。食費を考慮すればどうしても1日3000円位かかるはずだ。となると、どう考えても逮捕までの2カ月を報奨金では賄えないが、ひょっとしてこの逮捕以前にもスリをやっていたのでは?

 検察官もそれを怪しんでいたのか、「あなた2カ月、山谷に泊まると、かなり金かかりますよね?どうなってるんですか?」と追求するも、「あ~、平和島行くと、昔の仲間がいて、教えてもらって競艇で稼いでた」などと涼しい顔。競艇でそんな、稼げるか......?

 またスリについてもやはり、"仕事"としていただけあって、並々ならぬプライドがあるようで、

「今回は女、やったけど、前は男も狙ってた」
「(どういう人を狙うのかという質問に対して)......自分の、勘。要するに、インプレッションっていうんですか? 瞬間的に、短い間に判断してヤッてた」
「昔は集団でのスリにも参加したこともあるね。メンバーが抜けたから入ってくれと誘われて。ま~、助っ人ですか?」

 ほか、ここには書けない具体的なスリの方法まで詳しく披露する始末だった。が、最後には「もう、歳とって、目も悪くなってモタモタしてるから、スリ仲間との交流もなくなった......」と体力の限界も吐露。実質上の引退宣言だろう。最終陳述でも、スリとの決別を誓っていた。

「今回をもって、余生ないので、絶対にスリを辞める心構えができました。以上です!」

 Nとは違うが、昨年末、著名なスリ犯が逮捕されたとの報道があった。あだ名は"ギャンのタメやん"。ギャンブル場で犯行に及ぶことからこの名がついたという。いかにも昭和っぽいネーミングセンスだ。タメやんはNと歳の近い77歳。同じく若い女性の鞄を狙っており、こちらもひょっとして、スリとしての衰えを感じていたのかもしれない。

 犯罪ではあるが、自分はもう現役ではない、と自覚した男の姿は、見ていて哀しみを誘うものがあった。だが、Nには年金もない。出所したら生活保護か、また窃盗をするか、どちらかの道しかないのである。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『パンツを盗まれたナース』


パンツを取られちゃった。

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