>   >   > 

◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第34回

『大便させていただいたらお礼を!』前科25犯の艦船侵入おじいちゃん


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

51EHLcuIa1L._SS500_.jpg
*イメージ画像:『矢萩登の素晴らしき艦船模型の世界』

 住居侵入罪は刑法第130条。「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」とある。

 起訴されるときは、立ち入ったモノの種類によって「住居侵入」「建造物侵入」「邸宅侵入」など、罪名が違う。ちなみに住居とは人の住んでいる建物。建造物と邸宅についてはいろいろ分け方があるようだが、例えば学校は建造物、マンションの共用スペースは邸宅、として起訴されている例を見たことがある。これら3つはしばしば目にするが「艦船侵入」はちょっとレアだ。まず人の管理する船に勝手に乗ると、このような罪になってしまう、ということにもちょっと驚きだし、この罪で裁かれる被告人にも滅多にお目にかかれない。

 かつて、東京簡裁で一度だけ傍聴できた「艦船侵入」裁判は、こんな感じだった。

 被告人は昭和9年生まれのおじいちゃん。簡易裁判所にやってくる被告人は住所不定無職が多いが、なんとアパート経営と年金が収入源だという。こんなしっかりした生活をしている被告人は珍しい。と驚いていたところ、もっと驚いたのはその前科の数だった。なんと前科25犯! しかもそのうち少なくとも17犯が艦船侵入罪。筋金入りの艦船侵入おじいちゃんだ。

 今回は、セメント会社の敷地内に停留中の船内に侵入したという罪で捕まっている。認否では「自分、船に乗るとき、岸壁にいる人にトイレ借りたいって言いました」と、釣りに行った際にもよおし、トイレ使用の許可を得たと主張。

 ただ、セメント会社の言い分は違う。「トイレから出てきた男を船長が発見。『誰だ!』と言うと全速力で逃げ出した。一度は見失ったものの、甲板倉庫に逃げ込んでいるのを発見し、確保した。男が船に乗るのを承諾した者は1人もいない」

 被告人質問では検察官が独特の調子で追いつめる。

検察官 「あなた釣りをやるって言ってたけど、私もさ、ここ行ってきたけど、釣り、できないよ。工場ばっかで入れないじゃない? 立ち入り禁止してんだよ、みんな」

被告人 「知らないです」

検察官 「ホントか? でっかい看板ついてたぞ!? 立ち入り禁止のさぁ~。分かんなかったの?」

 そもそも、なんでそんなに何度も船に入ってるんだろう? 被告人に負けず劣らずおじいちゃんの裁判官が質問を始めた。

裁判官 「あなた、艦船に入るの、好きであること、間違いなさそうだね......。何か、艦船に入りたい、って気持ちあるんですか?」

被告人 「自分、若い時から船の塗装やってましてね。船、綺麗に塗れば......、綺麗になるんだな~って(ウットリしながら)」

裁判官 「でもあなた、船、入ってはヒドイ目にあってんでしょ? あなたがホントに大便したとしてねぇ、そこら辺に草むらあるでしょ? その辺で用を足す方が、刑務所行くよりずっといいでしょ?」

 いきなり大便についてのアドバイス。そして改めて、続けた。

裁判官 「......船、入るの、好きですか?」

被告人 「ええ、見てみたいですね......」

裁判官 「しかしあなたね、大便させていただいたんだから、船長さん出てきたらお礼をね? 言うのがスジじゃないんですか? 世話になったんでしょ?」

被告人 「ハイ」

裁判官 「世話になったら、ありがとう、って、お礼、言わなきゃなんないんじゃないの?......分かんないことだらけですよ!」

 こっちからすると、このやり取りの方が分からないが、結局、検察官は「前科では、艦船に侵入して宝くじ等の金品を窃取しているので、今回も窃盗癖のある被告人が何らかの金品を窃取する目的で艦船に侵入した」と懲役1年6カ月を求刑。追って行われた判決公判では、なんと懲役1年4カ月の実刑判決を受けていた。

 船に入っただけで懲役1年4カ月とは......。

 判決理由で裁判官は、「承諾を受けずに船に入ったと認識していたから逃げた。船舶への愛着が異常に強く、その愛情が犯行の一因になっている」と認定。そして最後に、被告人に向かって、こうシメた。

「まだ若いですけど......いいおじいさんになれるよう、努力して下さい」

 若い? どっちもおじいちゃんだよ!

次元の違うやり取り、被告人の船萌えっぷり。今でも忘れられない裁判の1つである。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『機動戦士ガンダム艦船&航空機大全集』


「ファースト」から「UC」まで!

amazon_associate_logo.jpg

◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】 バックナンバー
【第1回】ホームレスを手なずけ、大家を手にかけたA子のプライドとは
【第2回】動機の見えない放火殺人
【第3回】「呪い殺すぞ」「しっしっしー」二代目騒音オバさん 隣人との土地取引トラブル
【第4回】秋葉原17人殺傷事件:被告人が涙した、女性証人の心の叫び
【第5回】SMプレイの果てに彼氏が死んでしまった元レースクィーン
【第6回】男の奴隷となり、家族を手にかけた女の半生
【第7回】ミイラとりがミイラに!? 元警部補がトリコになったシャブと女
【第8回】SM、女装、シャブに暴力......元NHK集金人の奔放すぎるハーレム生活
【第9回】消火器とマヨネーズを郵便ポストに噴射...... SMの女王様の一途な恋
【第10回】平塚5遺体事件 生きている人間より死体の多い部屋
【第11回】遺体をノコギリで切断しコンクリート詰めに! 40代ブリッコ中国女の迷走ぶり
【第12回】「ブサイクな嫁とバカな子と一緒にいればいいじゃん」に激昂! 別れさせ屋事件
【第13回】11の偽名を持ち数年間逃亡した女 レズ殺人事件
【第14回】「合鍵を作って部屋に入ったら、強姦したくなった......」身勝手な殺人
【第15回】セレブ妻バラバラ殺人事件
【第16回】旧皇族・有栖川宮(ありすがわのみや)詐欺事件
【第17回】ジャニオタ女の一途過ぎる一方的愛情
【第18回】芸能界に蔓延るMDMAの実態を垣間見る
【第19回】「あなたの子供なのに、どうして!」嫌悪感の極致 不同意堕胎事件
【第20回】厚生労働省の郵便不正事件だけじゃない! 元検事によるトンデモ事件
【第21回】出会い系にご用心! カノジョの『告白』にキレた男が取った行動とは?
【第22回】川崎通り魔事件・被害女性が語る犯行時の恐怖
【第23回】「客として会うのは嫌。他の客と同じなのもイヤ」デリヘル嬢殺害・死体遺棄事件
【第24回】仕事も信頼も失う恐怖 元オリンピック選手による覚せい剤事件
【第25回】憧れていた日本への落胆が殺害の動機に!? 中国美女による殺人未遂事件
【第26回】「ネコに話したことが世界に筒抜けだから、組織的な犯罪」精神鑑定の基準は?
【第27回】「総菜3点」万引きした女医 事実はAVよりも奇なり
【第28回】「パンツの中に手を入れた認識はない」電車で痴漢したイケメン
【第29回】「やってない」という証明は本当に難しい 明日は我が身、スリ未遂罪裁判
【第30回】"見た目が派手だからすぐヤレるだろう"イケメン双子による集団準強姦未遂事件
【第31回】不倫相手の出張中に他の男とセックス、一転レイプされた! 虚偽告訴罪で逮捕
【第32回】AV業界の深い闇 「バッキービジュアルプランニング」裁判
【第33回】ストーカー規制法違反の被告人に見る"勘違い"の度合い

<特別編>
【第1回】年金だけじゃない老人問題! 高齢者による無銭飲食犯罪の増加
【第2回】再犯率48.9%! 覚せい剤取締法違反者の共通点と司法の問題
【第3回】強姦事件の8割以上は屋内で発生!! 被害を未然に防ぐヒミツとは?
【第4回】知っておいて損はない 判例の少ないネットによる名誉毀損について
【第5回】犯罪者に魅かれるオンナたちの心理
【第6回】通り魔殺人事件に見る「漠然とした不安」の根源




Sponsore
  • アイポケ
  • s級素人
  • FAプロ
  • MGS
  • OPPAI
  • KMP
  • smm
  • SOFT ON DEMAND
  • 溜池ゴロー
  • DANDY
  • teamZERO
  • 痴女ヘブン
  • ナンパJAPAN
  • BIG MORKAL
  • プレステージ
  • PREMIUM
  • MAXING
  • MOODYZ
  • MUTEKI
  • 乱丸
  • WANZ
  • twitter
  • facebook
  • google plus
  • feedly
  • RSS

menscyzo_161128_rectangle_c.jpg

メンズサイゾー グラビアギャラリー

人気記事ランキング

今日
今週