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【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第20回】

"救済"を求めるアイドルヲタ......ぱすぽ☆周辺のアツすぎる上昇気流


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CD+DVD『TAKE☆OFF(ファーストクラス)』ジョリー・ロジャー

 「Perfumeから離れて2年、どのアイドルにも夢中になれなかったけど、やっと安住の地を見つけたよ」。ぱすぽ☆のインストア・ライヴ後に入った居酒屋で、かつて同じ現場で狂騒を生き抜いた友人は心の底から嬉しそうにそう語った。その日までは、ぱすぽ☆へのあまりの彼の傾倒ぶりに引いていたものの、今ならその気持ちは分かった。ああ、彼は救済されたのだ、私を残して――。

 ぱすぽ☆は2009年に活動を開始したグループで、現在は10人組。所属事務所のプラチナム・パスポートはプラチナムプロダクションという会社の子会社で、主要取引先をエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社とするエイベックス系列にあたる。

 最初に彼女たちを2010年8月8日の「TOKYO IDOL FESTIVAL 2010」で見たときは、メンバーを「クルー」、ファンを「パッセンジャー」と呼ぶ、飛行機のフライトによる旅をテーマにしたコンセプトこそ印象に残ったが、「ガールズ・ロック・ユニット」を標榜する彼女たちの音楽性はストレートすぎるように思われた。

 しかし、他のアイドルのヲタが圧倒的に多かったあの場所が悪かった......と後になって感じたのは、ぱすぽ☆がシングル3枚を同時リリースするという行為に出たために全部買い、2010年10月24日にタワーレコード渋谷店でインストア・ライヴを見たときだ。当然会場はぱすぽ☆のヲタだけなので盛り上がりが段違い。ここ最近で、一気に他のアイドルからヲタが流れてきたという話も耳にしていたが事実だろう。竹中夏海の振り付けによる10人のダンスは、その人数を生かしてダイナミックなだけではなく、ときにフォーメーションがミュージカル的な面白さも感じさせる。ロック路線のサウンドは、ティーンエイジャー賛歌の「GPP」を筆頭に、シンディ・ローパー的な「ハイスクールはダンステリア」感が半端ない。ヲタもエキサイトして大騒ぎしており、その空間は非常に熱かった。

 「まこっちゃん、まこっちゃん、まこっちゃん、まこっちゃん、まこっちゃん、まこっちゃん!!」。冒頭に登場した友人は、私の横で絶叫していた。彼の推しメンである奥仲麻琴のニックネームだ。たしかに可愛い。そう考えていると、今度は「むっしゅ、むっしゅ、むっしゅ、むっしゅ、むっしゅ、むっしゅ!!」に変わった。佐久間夏帆が前に来たのだ。こうして私は現場系ヲタのおかげでメンバーの名前をみるみる覚えることができた。まこっちゃん可愛い。

 10月に同時発売されたシングル「GPP」「Go On A Highway」「Pretty Lie」は、それぞれオリコンの週間シングルランキングで96位、99位、94位を記録した。ここからスタートして、すべて200位以内に3週粘ったというのも、すぐにチャートで落ちるアイドルにしては珍しかった。1曲とそのカラオケで1,000円という価格設定には強気だと感じたが、それが問題にならない勢いがある。

 そして、これまでのシングルをすべて収録したアルバムが『TAKE☆OFF』だ。CD+DVDが「ファーストクラス」、CDのみが「エコノミークラス」と称されているのもぱすぽ☆らしい。貧図スクワットやBamboo Helicopterという作家が中心になって楽曲を手掛けているが、彼らの正体は謎だ。シングルだった「GPP」「Go On A Highway」「Pretty Lie」の並びは強烈で、特に「GPP」の最初は抑え目ながら徐々に力強さを増し、伸びやかになっていくヴォーカル・ワークは秀逸だ。

 サウンド的にはロック色で貫徹されているが、「無敵 GIRL」では90年代っぽい音色のキーボード、「BREAK OUT!!」ではオートチューンがアクセント的に使われている。激しくエレキ・ギターが掻き鳴らされる「夏空ダッシュ」も、歌詞のテーマは夏休み。アイドル的醍醐味だ。最後に収録曲のピアノ・ヴァージョンやオルゴール・ヴァージョンが収録されているのはどういうニーズだろう? 貧図スクワットやBamboo Helicopterの存在と並ぶ謎だ。

 「ファーストクラス」のDVDに収録されているビデオ・クリップは、メンバーそれぞれの表情を重視しているので、ダンスに関してはYouTubeの公式アカウントでライヴ映像を見たほうが魅力が分かるだろう。

 前述のようなシングルの価格設定でインディーズ流通、しかもこのヲタの盛り上がりときたら、かなりビジネスとしておいしいのでは......と考えていたら、同じ事務所から今度は「大人系セクシーユニット」と銘打って新たなユニット・pre-diaも登場した。ヲタの流入を防ぐために、pre-diaヲタによる「pre-diaの現場は全然つまらないよ!」という情報の撹乱戦もすでに始まっている。

 その一方で、ぱすぽ☆ヲタは「TAKE☆OFF」発売後、石丸電気での「発売記念フライトマラソンツアー」と題された19回もの連続リリース・イベントに臨んでいる。すべてに参加した猛者には「渋谷でファミレスの権利」が与えられる。当然メンバーと、だろう。この情報を目にしたとき、かつて現場でともに生きた友人に「生きろ」と心の中で強く祈った。知っている。修羅の炎をかいくぐることでしか得られない救済があるのだ。

◆宗像明将
1972年生まれ。音楽評論家として、日本のロックやポップス、英米のポップス、ワールドミュージックを中心に執筆。その一方、2002年からソニンのヲタに。彼女の歌手活動停止後は、魂の救済を求めてPerfumeとtoutouのヲタになり地下へ。現在は地下から地上までのアイドル・シーンを見守る。http://www.outdex.net/diary/

『TAKE☆OFF(エコノミークラス)』


考えるんじゃない、感じるんだ

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