M-1終了は「必然」漫才はできても”売れない”若手芸人たち

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 2001年から始まった漫才日本一決定戦『M-1グランプリ』が、10回目という節目を迎える今年、幕を下ろすことになった。

 M-1終了の発表は、ファイナリストを決める準決勝進出組のネタ見せが終わった後に行われた。よしもとクリエイブ・エージェンシーの水谷暢宏代表取締役社長は「漫才を全国に広めるという当初の目標を達成でき、次のステップに進む時期とみて、発展的に解消することになった」と説明。朝日放送の田中俊行制作局長は「新たなイベントを生み出すべく検討していきたい」と話した。突然の告知に、現場に居合わせたファンからは大きなため息が漏れ、「どうして?」「もったいない」といった声も聞こえた。主催者側の一方的とも言える発表に、お笑い文化に詳しい芸能記者はこう話す。

「すでに決まっている今年のファイナリストは、カナリア、ジャルジャル、スリムクラブ、銀シャリ、ナイツ、笑い飯、ハライチ、ピースの8組。つまりナイツとハライチ以外は全て吉本勢という構図です。主催が吉本であるうえ、そもそも他の事務所より芸人の絶対数が圧倒的に多いため、しょうがないことかもしれませんが、今年は例年になく異常な事態と言っていいでしょう。こうなってくると自作自演の感が強すぎる。吉本側は”漫才を全国に広める”という旗印の下にこの大会を運営してきて、それをある程度達成したから今回で解消するというわけですが、それは言い換えるとM-1で認知度を得た漫才によって地方のライブ会場の客足が伸びたということです。吉本は自前の会場を全国に持ってますから、これ以上、M-1を続ける意味は何でしょうか? ボロが出る前に撤退するといった賢明な判断なのだと思います」

 さらに、これまでM-1制作に関わってきた関係者はこう話す。

「数年前までは” M-1ドリーム”なんて言葉も聞かれましたが、それも07年のサンドウィッチマンまでのことです。それまで『優勝すれば必ず売れる』と言われてきたM-1神話は、すでに崩壊しています。すでに芸人飽和状態のテレビ界に、入り込む隙間はもうないということです。これ以上続けても、実力があるのに売れないという悲惨な芸人を量産するだけですから、制作側としても、そんな無責任なことはできないんですよ」(M-1関係者)

 確かにこの関係者の言うとおり、一昨年、昨年にグランプリを獲ったNONSTYLE、パンクブーブーは、優勝後にM-1特需でメディアの露出が爆発的に増えたわけでもなく、ブレイクしたとは言いがたい。むしろ08年の準グランプリだったオードリーの方が、大ブレイクしたと言っていい。

「漫才に関しての愛情が並々ならない紳助さんが企画している大会ですから、M-1の審査において、事務所がどことかコンビの出身がどこであるとかの差別はありません。純粋にネタが判断されます。つまりM-1で優勝するには、面白いネタとそれを披露する技術があればいいんです。でも実はこの純粋な判断基準は、裏を返せば、その漫才師のタレント性は関係ないということにもなります。つまりM-1で優勝するのと、視聴者にウケるのとは、まったく次元が違うということです。世間で売れるには、それこそネタよりも愛嬌や反射神経、タレント性が重視されますからね。NONSTYLEよりもオードリーの方がタレント性があったということです」(前同)

 すでにお笑いブームは過去のものとして語られているが、その時代に育った子どもたちは今、強い憧れをもって芸人を目指している。きっとその中には、笑いの才能など微塵もない人間も多いだろう。だが、そんな彼らにだって必死で面白いネタを考え、練習すれば、笑い転げる漫才を作り出すことはできるかもしれない。M-1育ちの彼らにしてみれば、それは大きな夢だ。だが、そもそも芸人というのは、「とてつもなく面白いヤツ」だけに許された職業だった。それが誰にでも目指せる職業になってしまえば、競争はますます熾烈をきわめ、挫折する者も後を絶たなくなる。M-1が新しいステージに行くのは必然なのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/

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あ~ん懐かしい。おぎやはぎも出てます

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