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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第29回

「やってない」という証明は本当に難しい 明日は我が身、スリ未遂罪裁判


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*イメージ画像:『冤罪File(ファイル) 2010年 10月号』 宙出版

 前回も少し触れた映画『それでもボクはやってない』は痴漢えん罪をテーマにした作品だ。世間的には〈痴漢はえん罪に巻き込まれる可能性がある〉という認識が生まれたかもしれない。が、今回取り上げる罪名のほうが傍聴人たちにとっては〈えん罪に巻き込まれる可能性がある〉モノとして認知されているように思う。

 男性Aは、窃盗未遂罪で逮捕、起訴され、東京簡裁で裁かれていた。若い会社員で、妻もいる。電車内で女性の鞄に手をいれた、いわゆるスリ未遂で逮捕されたのだが、Aは否認。

 そしてAを検挙したという刑事2名(上司のU、部下のG)も証人として呼ばれることに。2人によれば、経緯はこうだ。

「電車のホームで、前方に立つ女性の鞄のほうに頭を傾けていたAをスリだと確信、狙いをつけ、電車に一緒に乗り込んだ。逮捕の直前、Aの左肩が前方に傾いたのが見えたので、やってるな、と思い、捕まえた」

 なんとも恐ろしい話だ。

 部下のGは「電車に乗る前に被告人のスリガン(スリが獲物を物色するときの目つき)を確認した」という。そこでGはUに〈こいつはスリだ〉と相棒に知らせるためのサインを送った。ちなみにそのサインとは、肘を曲げて、招き猫のポーズをしつつ、人差し指でスリを指差す、という、なかなか恥ずかしいサインだった......。

 Aのスリガンを見たのは部下のGだけ。上司のUは見ていない。

弁護人 「逮捕のときまでに、被告人の視線は確認しました?」
U 「視線は見れませんでした」
弁護人 「Gが〈スリだ〉と知らせてきたことだけでなく、あなた自身の経験で不審だと思ったの?」
U 「不審でなく、スリだ、と思いました」
弁護人 「なぜ? 視線、見てないんでしょ?」
U 「顔がバッグに傾いてたから......」
弁護人 「顔がバッグに傾いてたから、スリだと? それだけで判断したんですか?」
U 「私の今までの経験です!!」

 大声で経験を誇るU。スリの捜査は通算12年。逮捕したのは約260名。確かにベテランだ。が、被疑者40~60名に否認され、それらの裁判すべてに証人出廷したという。長期勾留を避けるため「ウソ自白」をする被疑者もいると考えたら、かなり否認率は高いだろう。

 これは否認事件なので、Aがホームで怪しい動きをしていた、と主張する刑事らの裏付けが欲しいところだ。が、刑事らはなんと駅のホームの監視カメラの映像をチェックしていなかった。「その後、別の事件で確認したところ、1週間で(監視カメラのデータが)上書きされることが分かった」と言っていたが、スリ捜査のベテランであるUが、それを知らないはずがないのでは。また、バッグ内の財布の指紋採取も行ってない。

 そんな経験豊富なU、尋問の最後に「やっぱり視線は見た」と供述が変遷。他にもいろいろ変なところは多く、あまりの取り乱しぶりに検察官が「今日は混乱してるようなので......」と助け舟を出し、尋問が中断された。

 Aは逮捕の様子をこう語る。

「前日、朝まで同僚とカラオケボックスにいて、その後、仲間と別れて、仕事の準備をしてから帰宅するため電車をホームで待っていました。
 リュックを背負ったまま、混み合っている電車に乗り込んだので、荷物をおろしてかかえようと、右肩の紐を外し、左肩にかけている状態でリュックを前にかかえようと、ちょっと肩を動かしたとき『スリだ~!』と言われて逮捕されて......」

 この裁判は回数を経るごとに傍聴人が増え、傍聴席が満席になることも多かった。無罪ではないかという期待も膨らむ展開だったが、一審は有罪。そして控訴。控訴審も長期化し、ついに出た判決はやっとの無罪。〈スリだ〉と知らせてきたというGの供述が信用できないとされ、防犯カメラの映像を検討してない、指紋も採ってないということについても指摘されていた。

 一審から無罪判決まで、1年以上経っていた。つくづく思うが「やってない」ということを証明するのは、本当に難しい。

 電車の中だけじゃなく、ホームでも、ボンヤリしてたら無実の罪で逮捕される世の中なんである。この刑事2人組に狙われたら終わりだ......。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

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