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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第16回

【裁判傍聴】旧皇族・有栖川宮(ありすがわのみや)詐欺事件


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*イメージ画像:『皇族誕生』 著:浅見雅男/角川グループパブリッシング

 裁判所で詐欺罪の裁判を傍聴してみても、大多数が無銭飲食なのだが(無銭飲食は詐欺罪に該当する)、これは違った。なかなか大掛かりな詐欺である。

 2003年10月。旧皇族の「有栖川宮(ありすがわのみや)」を名乗り、結婚披露宴と称するパーティーを開いて祝儀をだまし取った疑いで男女3名が逮捕された。当時、散々ニュースで騒がれたこの事件、ご記憶の方も多いだろう。逮捕されたのは、有栖川識仁(さとひと)と名乗っていた新郎役のK(当時41)、新婦役だったS(当時44)、そしてイベント企画会社役員のA(当時42)だ。"有栖川記念奉祝晩餐会"と銘打った招待状が2,000人に送られ、300人を超える参加者が会場にやってきた。有名芸能人、元都議などもその場にいたそうだが、名刺交換だけで呼ばれた人も相当数いたようである。

 そして04年2月に開かれた初公判。起訴状によればKを皇族と信じた参加者たちからご祝儀として現金約1,206万円と1,500万円相当の絵画をだまし取ったという。KとSはそれぞれ「有栖川を名乗って結婚式をしたのは事実。だが皇族とは言ってない」「夫と結婚し、友人を呼んだだけ」と無罪を主張した(Aは大筋で起訴状を認めた)。

 冒頭陳述によれば経緯はこうだ。

 Kは1982年ごろ、姓を「伏見」と名乗りはじめる(由来は出生地名から)。その後、勤務先で皇族の血縁者と誤解されて「宮さん」などと呼ばれた。これがキッカケで詐称を思いつき、有栖川識仁を騙り、集会への出席の見返りに車代を受け取るように。その後02年8月、Kはパーティーで会ったSに好意を持ち、「有栖川宮家の継承者ではないから、殿下として扱わないでほしい」と打ち明けた。しかし、Sはそのまま詐称を続けるよう指示。03年3月、Aに「殿下は神に近い方なので、殿下との記念撮影に客は10万円でも払う」と話し、パーティー開催に協力させたという。

 おおむね罪を認めていたAの裁判は先に終わり、執行猶予判決を受ける。「皇室や皇族を尊敬して披露宴に参加した人たちの心理につけ入った」と裁判所は指摘。無罪を主張しているKとSの裁判はそれ以上に長引いた。

 05年12月に行われた公判では、Kの被告人質問が行われた。法廷に現れたKは背が高く体型のよい男性で、細い目にふくよかな顔立ち。確かに高貴と言われればそうも見え、宮さんと呼びたくなる気持ちも分かる。Sは、やせ型の体にグレーのストライプのスーツ、そしてロングヘア......という、勾留されている被告人の割には小ぎれいな格好。そして、なんと、ものすごい美人だった。スッピンなのに、透明感のある肌。目もパッチリしており、系統で言えば宮沢りえだ。シンデレラがだまされて場違いなところに連れて来られてしまった......みたいな印象を受ける。確かにこの2人が気合いを入れた装いで並んでいればだまされる人もいるかもしれない。

 Kはその顔立ちに似合うノンビリした関西弁で、「警備員をやっている頃、皇族関係の方だと職場で噂になりました」「京都グランドホテルで高松宮に会いました、そして有栖川識仁を使用してもいいと、いただいたっていうか......」などと述べ、「ボクはぁ~、別に~、詐欺は~、してません。ただSと結婚して、お披露目のために、やっただけで~」と、あくまでも自分が皇族関係者と認識していて、騙したつもりはないという主張であった。

 しかし検察側に「京都グランドホテルに高松宮は泊まったことがないが......」などと追及を受けており、さらには、かつてKが書いた履歴書が示された。名前欄には「伏見宮」、住所は南麻布、幼少の頃から学習院に通っているという学歴のものだった。「学習院ってのはウソ......私は全然ここまでいってないから、こうありたいってことで。住所は有栖川宮記念公園のもの......」と、願望が入り交じったものであることが明らかになる。また、かつてKが作成したという別の書類が示され、そのサインの書式について尋ねられたとき「これは武家の作法ですから」と一言。皇族関係者ではなかったのか。激しい追求で混乱したのだろうか。

 またSとは婚姻届を出していなかったらしい。それについて尋ねられると「Sのほうから特に言われてない。Sはイイ人。でも年齢がある。......あとSの名前......私の知ってる『S』の名前の人は、たいがい、結婚しない人。それか夫が死んだり、そんないろんなジンクスあって」と抗弁。本気なのか、ものすごい偏見だ(このときSは、泣き出したが、あっという間に泣き止んだ)。

 ここで話題に上がったSだが、ある時は車椅子で法廷に現れたり、ある時は法廷で具合が悪くなったのか、よろけたりと、なかなか目が離せない。さらにある時は「死刑にしてください、死んでもかまいませんから。精神安定剤ください」と取り乱し裁判長に「いい加減にしてください!」と一喝されながらも、検察官を指差して「あなた、私を引っ掛けようとしてるんでしょ」などと発言し、被告人質問が一旦打ち切られることも。傍聴人の間で常に話題に上る被告人であった。

 そんな両名には06年、懲役2年2月の判決が言い渡される。未決勾留日数は700日。裁判所は「Kの供述は旧宮家を語るための荒唐無稽な作り話であることは明らか」と述べ、さらに、捜査段階のSの供述などから「SはKが皇族関係者でないことは分かっていた」と指摘した。ただ、被害者137人のうち76人は「皇族関係者でないことを知っていた」として、詐欺は成立しないと判断した。控訴はせず確定し、すでに出所している。

 さすがに詐欺罪なだけに、何が本当で、何がウソなんだか分からなくなるような裁判だったが、Kは詐欺のためというより、高貴なものへの憧れがそうさせたような印象を受けた。そして法廷でのさまざまなパフォーマンスが冴えていたS。神経の太さを伺わせたが、この事件以前に詐欺を働いたことはない。否認事件なので明らかになることはなかったが、いつ、なにがきっかけで、この事件を起こそうと思ったのだろうか。それにしても皇族関係者でないことを知りつつ披露宴に参加した面々が半数以上とは、ただただ驚かされるばかりである。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

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