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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第13回

【裁判傍聴】11の偽名を持ち数年間逃亡した女 レズ殺人事件


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*イメージ画像:『大場久美子 濡れた心 ~レズビアン殺人事件~』出演:大場久美子

 整形のせいか、ノーメイクでも人目を引くはっきりした顔立ち。一時は新宿二丁目で飲み屋を2軒経営していたというが、その華やかな生活の片鱗は、この顔立ちにしか残っていない。職員に腰縄を引かれ、黒いジャージで足をひきずるように歩くたび、表情のないうつろな目が、うつむいた彼女の前髪の間から見え隠れする。法廷は静まり返っていた。

 女は前田優香(46)。2005年3月、当時の恋人だった鈴木友幸(ゆうこ)さん(当時39)を、同居していたマンションで刺殺し、逃走。"大原志麻""鈴木由子"など11の偽名を使いながら逃亡生活を続けていたが、07年3月、赤羽の健康ランドで逮捕された。このとき所持金は950円だったという。当時は『レズ殺人』や『11の名を持つ女』などと騒がれた事件である。

 同年9月に東京地裁で行われた初公判、ここで、優香と被害者、そしてパトロンだった男・Mとの三角関係が明らかになった。

 04年にMと知り合った優香は「結婚する」などとその気にさせ相手から金を引っ張り始める。その後、通い始めたスナックで、そこの経営者である被害者と出会い、恋愛関係に。ほどなくして2人は同棲を始めたが、被害者が性病にかかってしまう。付き合う前に「男とセックスしてない」と言っていた優香だったが、被害者の感染源は当時、彼女しかいなかった。

 当然ながら、被害者から2人の仲を疑われ、会うことが困難に。パトロンの男に会えず金に困った優香が、勝手に被害者のカードを使ったりし始めたことで、被害者はさらに優香に不信感を抱くようになっていった。

「最初はレズに抵抗感あった......」

 と、しまりのない口調、小さな声でこう述べる優香、もともとノンケだったようだ。しかし被害者の優しさに惹かれ、つきあうようになったらしい。当時、被害者が優香に送ったメールにはこうある。

「朝も昼も夜も毎日、優香のことばっかり考えてる。早く会いたいな」

 優香はもともとアルコールや睡眠薬の常用者。不安定だったのだろうが、そうでなくても、こんなメールを矢継ぎ早にもらえば、心が動くのも分かる。

「でも、事件を起こしてから......冷静に考えて、彼女のこと、重荷になってたんだと思いました。女の子から電話が来たら怒ったり、私と一緒にいる時は出かけない、いつも一緒で......。ああ、やっぱり考え方が違うんだ、と」

 ギクシャクしてしまった2人は、事件当日も些細なことから口論になる。

「『私と付き合ったことを後悔してるの?』と聞いたら『お前と一緒だよ』と言われました。その後、私は男好きだという趣旨のことを言われて......」

 そして台所にあった包丁を手に取り、被害者のもとへ突進。刺し傷は18カ所。まさにメッタ刺しだ。しかし、具体的に何を言われてそこまでやってしまったのか。

裁判長 「あなた被害者のどの言葉に逆上したんですか?」
優香 「後悔してる、ってことと、あと、性的なことを言われた......」
裁判長 「どちらが大きい?」
優香 「すごく、後悔してるってのが大きいかもしれないけど、性的なことを言われたのも、頭に来た......」

 この「性的なこと」というのは、結局法廷では具体的に明かされなかった。

「なぜ、彼女が後悔しなきゃいけないんだと思って......。彼女が後悔してると思ってなかったから......。でも、聞いてみたかった......私が後悔してた......確かめたかったから」

 優香は殺害後、3~4回マンションに戻り所持品を持ち出しており、その際、玄関先に倒れている被害者の遺体を何度も目にしている。そしてその後、被害者のクレジットカードで帽子など、計約35万円の買い物をした。

検察官 「あなた何回かマンションに行ったんですよね?」
優香 「はい、彼女を見ました......血がいっぱい出てて......」
検察官 「目を見開いていました?」
優香 「目はちゃんと、閉じました......」
検察官 「血はそのまま?」
優香 「拭きましたよ」
検察官 「お布団のところに移動して、ちゃんとしてあげようとか、考えなかったの?」
優香 「腸が出ていたので、動かさない方がいいと......」
検察官 「亡くなってるのになぜ、そうしなかったんですか? ホントにかわいそうだと思ってる?」
優香 「思います~(涙)」

 遺体の目を閉じる、血を拭くなどしつつも、遺体は基本的に放置し、被害者のクレジットカードで多額の買い物。そして逃亡。事件直後、被害者名義の会員カードで、かの有名な逃亡犯であり、同僚ホステス殺害の元受刑者、福田和子(57歳で病死)を題材にした映画をレンタルしていた。2年程で捕まるあっけない逃亡劇だったが、彼女は福田和子ばりに長い逃亡を覚悟し、時効まで逃げようと思っていたのだろう。

「付き合ったことを後悔していた」と事件当時の気持ちを語る優香。たいていの女は「この人とは終わりだな」と思うとスッと気持ちが醒め、愛情がなくなるどころか、何故この人のことを好きだったんだろうと不思議に思うものである。後悔してるということは、もう事件当時、被害者への想いは醒めていたのだろう。被害者の気持ちが重荷になっていたことからも明らかだ。

 恋愛の終わり際というのは、ついつい相手を傷つけるようなことを言ってしまいがちだが、一体被害者は、どんな「性的なこと」を優香に言ったのか。今さら論だが、それさえ言わなければ......という気持ちにもなってしまう。

 また優香は金への執着が強いようにも見えたが、実際は寂しさを金で埋めているのかもしれない。

「小さい頃は、絵画、ピアノ、バレエ、日本舞踊、英会話......たくさんのお稽古ごとをやらされていました。母のしつけは厳しかったです。ブラシやスリッパで叩かれたり、父のいない時には殴ってきたり......怖かったです。その反面、お金や服には不自由しませんでした。父が死んだ後、母は私の名義で色んなとこに借金したので、私が借金を背負わされました。それを知ったのが30歳くらいのとき......母に愛されているとは思っていませんでした」
 
判決は懲役15年。控訴も取り下げ、刑は確定している。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『悪女の涙―福田和子の逃亡十五年』著:佐木隆三/新潮社


メディアが報じない、報じきれない事件の闇に肉薄

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