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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第10回

【裁判傍聴】平塚5遺体事件 生きている人間より死体の多い部屋


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※イメージ画像 photo by la_febbra from flickr

 2006年5月、神奈川県平塚市のアパートで、住人の無職・山内峰宏さん(35)と岡本利加香(りかこ)さん(19)、そして乳幼児3人、計5名の遺体が発見された。山内さんと利加香さんは異母兄妹。山内さんの母親が、1日にアパートを訪れた際、和室の布団で首を絞められて死んでいる利加香さんを発見、そして山内さんは玄関付近で首を吊って自殺していた。そして同月3日、利加香さん殺害容疑で、その母親が逮捕された。

 女の名は岡本千鶴子(当時54)。今回の主役だ。

 事件発生の5年前、山内さんがアパートを借り、ほどなく利加香さんもそこへ移り住んだ。そして千鶴子もこの頃から一緒に暮らしていたようである。

 当時の調べによれば、千鶴子は利加香さんを2005年10月頃、アパート内で絞殺している。ということは、山内さんと千鶴子は乳幼児の遺体のほか、利加香さんの遺体とも同居していたことになる。また乳幼児については、1人は身長120センチ程の男児で、1984年に行方不明となった千鶴子の長男(当時6)、2遺体は妊娠40週目程の新生児、いずれも24年前に千鶴子が産んだ子どもだと判明している(3遺体については、死体遺棄容疑の時効を超えているため不起訴)。生きている人間より死体のほうが多い部屋だったようだ。

 また、山内さんの遺体のそばには「死にたい。一緒にさせて」などと書かれたメモが見つかり、当初は山内さんが利加香さんを殺害した疑いもあるとされていたが、後に室内から千鶴子が書いたと思われる「娘を殺した」というメモが見つかった。

 と、何から何まで気持ちの悪い事件なのだが、裁判もなかなか気持ちが悪かった。法廷に現れた千鶴子は、逮捕当初、テレビで散々流れた恰幅のよい姿とはほど遠く、すらりと痩せて目鼻立ちのクッキリと整った美女。妙な色気がある。白髪まじりの肩までの髪に、ゆったりとした黒のブラウスとパンツ。一見、銀座辺りをうろついているアートかぶれの中年女のようだ。

 自分の子どもの遺体を捨てることなく所有し続け、死因についても言及せず。さらには利加香さんも殺害。山内さんの自殺の原因も謎。アパートに住んでいた人間の中で生きているのは千鶴子だけ。この顛末について、そして利加香さん殺害について何か語ってくれるのでは、と期待していたが......。

 06年8月に行われた初公判で、「私は殺していません」と利加香さん殺害を全面否認した。
 
ところで、生前の利加香さん、山内さん、千鶴子の関係はどのようなものだったのか。千鶴子の娘であり、利加香さんとは父親違いの姉は証人出廷し、こう語っている。

「被告人からは、病院で暮らしていると聞いていました。利加香さんは友達の家でルームシェアしていると。実際は3人でアパート暮らしをしていたっていうことは、事件まで知りませんでした」
「被告人が日記をつけていたのを見たことがあります。覚えているのは......ある出来事に対して『友達に金を貸して返ってこない』と書いてあるけど、実際には逆で、その人から『金を返してほしい』と連絡があったりしました」

 と、千鶴子はどうも細かいウソを散りばめる系の女だったようだ。また、「人にやってもらったのに『やってあげた』と言ったり、私や利加香が病気になったというウソをついたりもしていました」と語っており、かなり厄介な女であることが分かる。実際、事件当時も日記をつけているが、それもアリバイ作りが目的だと思われるような記述がままある。

 異母兄妹の関係についても、

「利加香と峰宏は私から見て仲のよい兄妹。峰宏はおっとりしてて、優しい子。利加香は純粋で努力家。彼女の口から死にたいとか言ってるのは聞いたことがない」
「峰宏が利加香に恋愛感情を抱いてると思ったことはないです。被告人と会った時『峰兄ちゃんが利加香にいたずらした。利加香が自殺しようとしたから手助けした』と言ってたのを聞きましたが、ありえないって思いました」

と、当時の千鶴子の話を強く否定した。また千鶴子は公判でさらに供述を変え、こう主張。

「買い物から帰ったら利加香が死んでいた......峰が『自分が殺した』と言ってました」
 
千鶴子が言うには、峰宏さんが利加香さんをレイプして、そして殺害。その責任をとって自殺したというのだ。利加香さんの遺体をそのまま部屋に置き続けた事についても、

「利加香がそばにいたほうが、峰が早く自殺するんじゃないかなと思って」

 相変わらず上品な喋り口だが、平然とこんなことを語るなんて、やっぱり変だ。

 弁護人に対しては饒舌だった千鶴子。しかし検察官からの質問には態度を豹変。「言いたくありません」のオンパレードとなり、口をつぐんだ。果ては「何についても、私は警察を信用してませんから。だから私は殺人という罪を償うつもりはありませんでした。裁判もキライ......」とパンクスさながらの権力批判、そして無理のある論理展開。

「私は長男(遺体となって発見された男児)が失踪したときから警察に不信感を抱いています。警察が捜査をしてくれなかった......私がキャバレーに勤めてたって、それだけで判断されました......そういう女だと!」

 そもそも長男は失踪したのではなく自宅で遺体となって発見されているのだから、まるっきり意味が分からない。だから、キャバレー勤めをしていたから警察が動かなかったという話も、本人がそう思っていただけという可能性もある。実際、夜の仕事を差別していたのは、千鶴子自身だったのでは......?

 結局、殺害の動機は、そもそも殺害を否認しているので、語られるはずもなく結審。判決は懲役12年。

「これから先、公判が続いても、私は何も言いません。どんな刑を下されても話すことはありません。すみません」と裁判所に語っていた千鶴子。ところが控訴していた。さすがのエキセントリックぶりだ。控訴審でも同じく無罪を主張したが、あっけなく控訴棄却。

 控訴審では検察側から、峰宏さんと利加香さんに対して複数の生命保険がかけられていたことが明らかとなった。また事件当時千鶴子は、コンビニ店長と不倫していたが『妊娠したので中絶した』などと言い(真偽は不明)金を引っ張っている。さらに、娘が留学するなどの細かい理由を告げては不倫相手から金を借り、最終的に自己破産に追い込んだ。彼女の周りには、ほかにも金にまつわる話があり、まだまだ謎が多い。

 事件については、自分の子どもが何人も死んでいるのだから、親だったらもう少し、取り乱したり、ありのままの話をしようと思うのが普通だろう。だが彼女にはそれがない。利加香さんがレイプされた話をするときも平然としており、峰宏さんが死亡したときの話をするときも、泣かなかった。ここに全てが現れているのではないだろうか。

 利加香さんの姉は、尋問の最後でこう言った。

「彼女の子である限り、次はもしかしたら私かなと思うときがあります」

 千鶴子は、子どもたちを、いつでも自分の好きなようにできる所有物としてしか見ていなかったのかもしれない。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『日本の殺人』著:河合 幹雄/筑摩書房


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