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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第9回

消火器とマヨネーズを郵便ポストに噴射...... SMの女王様の一途な恋


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*イメージ画像:『そしてやさしく踏みつぶす―料理人からSMの女王様になったアンナの愛のかたち』
著:スーザン ワインメーカー/アスペクト

 元SMの女王様が手錠でつながれて法廷に現れるなんて、なんだか皮肉なものだ......。

 S子(逮捕時35)は、当時の夫(現在は離婚)で格闘技ジム経営の男性A(38=同)を刺した殺人未遂の罪で2008年12月、逮捕。去年末まで東京地裁にて裁判が行われていた。逮捕以前は"蝶子"という名で女王様として活躍していた彼女。そして被害者は元格闘技ジム経営。なんだか派手な事件である。

 しかし法廷に現れたS子は赤いフリースにグレーのズボンという、スタンダードな地味系被告人スタイル。そして赤いメガネをかけた顔は、長期間勾留されていることのストレスか、吹き出物がたくさんできていて気の毒な程だった。

 事件の経緯はこうだ。
 
 2人は07年8月に入籍。だが当時S子は大阪に住んでおり、夫婦になってからも別居の状態だった。08年12月上旬、Aと暮らしたいと上京。実家に住みつつ、2人で住むための部屋を探したり、もうすぐ夫婦として一緒に暮らせる日が来ると楽しみにしていたという。が、Aにそこまでの気持ちはなかった。S子のことはあくまでもセフレの1人だとしか思っておらず、婚姻届もノリで出したというのだ。かなりの温度差である。

 そんなとき、S子はAが別の女性と仲良くしているのを知り激高。『ダンナを取られるくらいなら殺した方がましだ』と犯行を決意。口論ののち、消火器とマヨネーズをA宅の玄関郵便受けに噴射。その後、果物ナイフにアイスピック、そして包丁を買って再びA宅へ行き、犯行に及んだ。

 消火器とマヨネーズというのもインパクト大だが、凶器を3種類揃えての再訪はよほどのガッツがなければできないだろう。自身も格闘技をやっていたというAもさすがに重傷を負い、刺し傷は深さ10センチ。一時はICUに入る程だったという。

 ある日の法廷では、Aが被害者として意見陳述を行った。証言台の前に立ったAは革ジャンに茶髪、ガッチリした体型、といかにも派手な仕事をしていた人間らしい風貌だ。

「彼女のことは友人の1人だと思っていました。10年来の知り合いですが、途中、連絡を取ってなかったこともありました」

 と、やはりAにとってS子は"友人の1人"だったと強調。S子は表情を変える事なく、うつむいて陳述に耳を傾けている。

「当日、右手に小さなナイフを持った彼女が土足で部屋へ上がり込んできました。私は小手返しの要領でベランダへナイフを投げ込みました。
 すると今度は大きな包丁を持っているので、私は部屋にかかっていた洋服をハンガーごと手に取り、盾のようにかざして身を守りました。その後すぐ彼女は左右水平に包丁を振りながら切りつけてきたので、ハンガーにかかっていた服は破れてしまいました......」

 すごい闘いぶりだ。さすが格闘技ジムを経営していただけはある。

「ジムも開けられない時期があり、事件の翌日、新聞に記事が出てジムの名前も広まった。徐々に退会者も出て資金繰りが苦しくなり、ジムはやめることになりました。
 被告人のことは恨みました。傷の見た目もグロテスクだし、アスリートが怪我前のようなパフォーマンスを出せるようにはならないからです」

 確かにAの怒りももっともだ。かたや、S子は動機についてこう語る。

「刺した理由は、浮気はもちろんだけど、口論で開き直られて、ひとことも謝ってもらえなくて......。事件の時、向かい合って顔を見て、浮気は許せないけど、ずっと好きだったから、ためらってしまった......。刺せないと思って動けなかったけど、やらなきゃと思いました」

 かつて「オナニーに使うから」というAの求めに応じ、自分の陰部の写真を写メしたりもしていたS子。とにかくAのことが大好きだったというのはイタい程伝わってくる。

 弁護人もこう援護射撃した。

「Aは、上京してきたS子の歓迎会をしたり、披露宴をやろうと言ってきたり、彼女が見せる物件の間取りを『いいかも』と答えたり、期待させるような言動を取っていた。しかし、歓迎会直後に、他の女と交際していることが分かり『別れて』という被告人の求めにも『ムリ』と一言述べるだけでした......」

 S子が事件当時うつ病治療のため薬を服用していた事から、この事件では精神鑑定が行われていたが(結果は責任能力に問題なし)その鑑定人さえも『本当にある意味気の毒』とコメントしているという。

 Aも気の毒だが、確かにS子にとっても気の毒な話だ。おそらくS子は純粋にAのことが好きで、お互い好き同士だから入籍できたと思っていたに違いない。しかも一緒に暮らそうとワクワクしていた矢先の浮気発覚。激高とまではいかなくても普通なら落ち込む。ただ、お互いの温度差、相手にはそんなに自分に対して気持ちがない、ということを、たとえ距離が離れていても、少しは察するのでは......という気もするのだが。そこは不思議である。夜の蝶だったS子は意外にもオクテだったのだろうか......。

 Aについては被害者であるし、経済的にも身体的にも被害を受けた事は間違いないのだが、さすがに冗談で婚姻届はマズいだろう。

 裁判所も判決でAの言動についてこう述べている。

「夫は結婚を考えていたわけではなく、性欲解消のための女友達としか考えておらず、戯れに婚姻届を出した。軽い気持ちで応じたにすぎない。にも関わらず東京に戻ってきた被告人から同居を求められたりすると、その気がないのにその気があるような素振りをして、期待を膨らませる言動を取った。
 人生を一緒に送って行く気がないにも関わらず、不誠実。夫にも相当な落ち度がある」

 しかし被害は大きかったことから、S子には懲役7年が求刑され、懲役4年の判決が下った。

 裏切られたといって相手を傷つけても、法を犯せば自分が罰を受ける。それくらいは分かるはずなのに、それでも元夫を刺してしまったS子。自暴自棄になったのか。お互い相手が悪すぎたとしか言いようがない。

「あなた、自分の人生、命、自分をもっと大切に。そういうものをもって、これから生きてもらいたいな。自分の人生を大切にすることが、人の人生も大切にする考え方、持つ土台だと思うな」

 裁判長からこう声をかけられたS子は赤いメガネを外し、涙をしきりに拭っていた。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『SM女王様集団プレイ4時間』


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