極秘結婚した小沢健二が反グローバリズムに傾倒した理由とは

ozawakenji0627.jpgCD「今夜はブギーバック」EMIミュージック・ジャパン

 1990年代に「渋谷系の王子様」として一世を風靡したオザケンこと小沢健二が、映像作家のエリザベス・コールさんと極秘結婚していたと写真週刊誌「フライデー」(講談社)が報じた。報道によると、小沢は現在、エリザベスさんと日本で同居しているという。

 世界的な指揮者・小澤征爾を叔父に持つサラブレッドである小沢は、小山田圭吾とのユニット、フリッパーズ・ギターで「渋谷系」と呼ばれる音楽ジャンルを牽引。ソロデビュー後も「今夜はブギー・バック」「ラブリー」「カローラⅡにのって」(すべてEMIミュージック・ジャパン、以下同)などヒット曲を連発し、独特の”王子様キャラ”で人気を博した。しかし、1998年のシングル発売後から音楽活動をほとんど休止し、世間的には”消えたアーティスト”となっていた。

 今年、長い沈黙を破って13年ぶりとなる全国ツアーを開催し、音楽活動を再開した小沢だが、今まで何をしていたのか。

 小沢は活動休止中、アメリカに生活の拠点を移し、南米を中心に世界各地を旅していた。結婚が報じられたエリザベスさんは、その旅に同伴していたようだ。その頃から、なぜか小沢は反グローバリゼーション思想に急激に傾倒し、資本主義を否定する童話小説『うさぎ!』を05年に発表。童話と銘打っているが、反米路線を進めるベネズエラのチャベス大統領を賞賛するなど、非常に重いテーマが扱われている。

 さらに、南米の旅を通してラテンアメリカの暮らしを記録した自主制作映画『おばさんたちが案内する未来の世界』の有料上映会を、エリザベスさんと共に地方の美術館などで開催。コアなオザケンファンが会場に集まったが、映画を観た人々からは「大切なことを見失っていたと気付いた」などの賞賛の声が上がる一方で、「方向転換しすぎでついていけない」「資本主義の危険性を主張しているのは分かるが、具体性が無さすぎて二人が何をしたいのか全く見えない」という戸惑いの声も多く聞かれた。また、上映会後の意見交換会が、自己啓発セミナーのような雰囲気だったことに驚いたファンも多かったようだ。

 曲も歌詞もファッションも極めて都会的で資本主義の申し子のようだった小沢が、なぜ180度転換した思想に染まったのか。コアなファンや音楽関係者の間では、結婚相手のエリザベスさんに感化されたことが大きいとする見方が強い。

「お相手のエリザベスさんは、写真家というよりも実態は社会活動家に近い。アーティスト同士が惹かれあったというより、活動家としての目的を共有しているという絆が強いのでしょう。小沢は活動休止して米国に渡る前から、音楽性や言動に変化がありましたが、変人の彼のことですから誰も気に留めなかった。しかし、米国での生活を始めてから、明らかに思想が偏るようになりました。やはり現地でエリザベスさんと出会ったことが大きかったのでは。日本では彼の周囲にいなかったタイプですし、家柄の良さが逆にコンプレックスになり、誰かに啓蒙されることで社会活動に目覚めるというのは、よくある話ですからね」(音楽関係者)

 小沢といえば、「小山田圭吾との間で渡辺満里奈を取り合ったことがフリッパーズ・ギター解散の理由」だとファンの間でささやかれるなど、女性関係が仕事にそのまま影響しがちだと言われる。

 とはいえ、全国ツアーでは往年の姿そのままにヒット曲を歌い、オザケンファンは純粋に満足したようだ。果たして今後は、再びファンの王子様として以前のヒット曲のような作品を歌い続けていくのか、現在の思想が影響した新たな作品を生み出していくのか。02年には急にR&Bに傾倒した4枚目のアルバム『Eclectic』で物議を醸し、05年には「うさぎ!」のサウンドトラックともいわれる全編インストゥルメンタルの作品『Ecology Of Everyday Life: 毎日の環境学』でファンを面食らわせた小沢。良くも悪くもファンが予想できないような作品を生み出すことも考えられるだけに、ツアー後の音楽活動に注目したい。
(文=ローリングクレイドル/Yellow Tear Drops

『MUSIC MAGAZINE』2010年 05月号

 
今でも王子様?

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