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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第5回

SMプレイの果てに彼氏が死んでしまった元レースクィーン


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※イメージ画像 photo by sskiong from flickr

 黒いピッタリとしたスーツに、クッキリとした目鼻立ち。サラサラのロングヘアがすらっとした長身によく似合っている。彼女が法廷に入ってきた瞬間、傍聴席は静まり返った。被告人になっても消えることのないイイ女オーラに圧倒されたかのようだった。

 E里(逮捕当時31)は08年1月に交際相手を刺し、その結果死亡させたという傷害致死の罪で逮捕、起訴された。彼女は元Vシネ女優。レースクイーンもやっていたというが、なるほどスッピンでも相当美しい。

 罪状認否では、容貌によく似合う高くキレイな声で、「記憶がなく、分かりません。私が、私自身で大切な彼を傷つけることは、絶対ありえない」と述べ、合わせて弁護人も「傷は、彼自身が刺したか第三者が刺したか、どちらかです。もし被告人が刺したのだとしたら、意識が朦朧とした中で彼に犯行を強制された。責任能力はなく無罪です」と主張した。なんだか妙な話である。そしてE里が語る事件の経緯も妙だった。

 2人はE里が20歳そこそこの時に知り合い、付き合い始めた。彼氏は20歳以上も年上。肝硬変を患っており、「このまま飲み続けると余命は一年」と医師からもクギをさされていながら、「酒が飲めないなら何の楽しみもない」と、毎日大量に飲酒していたという。

「前の日の夜、パスタを作って一緒に食べて、その後、まだおなかがすいてるというのでコンビニに行き、帰ってきました。私は24時半に寝る準備をして、パジャマを着てベッドへ入りました。彼はテレビを観ていましたが『もう寝ちゃうの』と言って胸や体を触ってきて、イチャイチャしていました。『風邪気味なので後にして』と断ると、彼はすねていましたが、ケンカにもならずそのまま寝ました。寝たと思っていました」

 そして次の記憶が、

「彼にセックスで起こされました......なぜか床の上でしてて、それで、あぁ、彼はやっぱりしたかったんだなぁ~と、そんな風に考える時間もあり、少しの間抱き合っていました。しばらくすると彼が、『E里、背中を見て』っていうので、彼のセーターをまくり上げて見たら、パカッと開いた傷がありました」

 と意識を取り戻した時には、すでに彼には傷ができていたようなのだ。

「『切り傷みたいになってるよ、また転んじゃったの?』と聞いたら『アロンアルファでつけといて』っていうので、傷口を挟むようにペトッとアロンアルファでくっつけました。私のもそうですが、暴力の傷はアロンアルファで治していました」

 その後、彼がベッドに横になったので、布団をかけようとしたところ出血に気づき、通報したが間に合わなかった、ということのようだ。

 ところでこの手慣れたアロンアルファの使い方からも分かる通り、この2人の性生活はかなり独特だった。検察側は冒頭陳述でこう述べている。

「2人にはSM嗜好があり、以前からお互いに殴る蹴るの暴力を加えて、その後セックスをするという性生活を送っていた。知人に対して被告人は『暴力はコミュニケーションみたいなものだ』とも語っている」

 2人を知る関係者も、「彼らのケンカは『マネジャーからのメールにヤキモチをやいた』とか『化粧が遅い』とか『ケータイに出ない』といった些細なことから殴り合いになっていた。何度かE里が顔を腫らしているのも見た」と語っている。

 そしてE里自身も、彼の暴力について、相変わらず淡々とした様子でこう述べた。

「彼は右手も左手も使えてとても器用......。左右の拳で殴られ、蹴られ、モノでも殴られます。酒ビン、ベルトのバックル、フライパン、姿見、物干パイプ、胡蝶蘭の鉢、そういったもので......。また掃除機の柄の部分を持って本体をぐるぐる回して、私にぶつけてくる。走行中の車から振り落とされたり、アタマをボールのように踏まれ、蹴り上げられたり......」

 カウボーイさながらの暴力っぷりだ。すごすぎて全く笑えない。両利きだということに感心している場合じゃないだろう。

「暴力の後は記憶がなかったりするのですが、気づくと彼が反省していて、自虐行為を始めます。私を殴っていた酒ビンとかで自分を殴ったり、ナイフで体を傷つけたり、私にナイフを渡して、刺すように言ってきたり......。もちろん刺しませんが、そしてその後仲直りというか、セックスをしていました」

 そんな生活、体がいくつあっても足りなそうだが、E里は本当に彼を愛していたらしく、涙声になりながら続けた。

「私がなぜ殴られないといけないのか、っていうことより、なぜ、彼は私のことを殴るのか、必死で理解しようとしました。悩んで出した結論は、彼にとって暴力は不器用な愛情表現のひとつ......私はそれを、それとして受け入れました。別れようと思ったことはありません」

 判決は懲役2年6カ月。裁判所によると第三者の介入はなく、刺した場所から、彼が刺したとするのも無理があるため被告人の犯行だと認定され、経緯としてはいつもの暴力のあと、嫌がる被告人に無理矢理ナイフを持たせて刺すよう要求し、拒みきれなくなったという可能性は十分考えられる、としている。責任能力についても、暴力で脳しんとう後のボンヤリした状態であったとされるが、精神病ではない、と一刀両断。

 なんというか、E里がちょっと気の毒だ。彼を愛しているからこそ暴力を受け入れる決断をしたものの、こんなことになるとは。しかも本人も、ウソじゃなくマジメに犯行時の記憶がなさそうなのだ。自分の行為で相手を死なせてしまったという悲しみは相当なものだろう。かつて華やかな世界にいた女性が、彼氏の暴力を受け入れ、事件になり、懲役刑となって刑務所へ......。人生は本当にどうなるか分からない。

 彼の暴力から逃げずに付き合い続けたことから、2人の性的嗜好は合わないわけではなかったのだろうが、やりすぎだ。誰しも若い頃は、自分の気持ちとは逆に、好きな人に冷たい態度を取ったりキツい言葉を投げかけたりした過去があるだろうと思うが、その発展形なのか......?

 なかなか理解できないことが多いこの事件だが、さらに彼の、セックスと暴力の結びつきっぷりは、強烈だ。おそらく筆者だったら胡蝶蘭の鉢で殴られた時点で逃げ出すだろう。彼は幼少時代からどんな成長を経て、この性癖にたどりついたのだろうか......。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『超なまレースクィーン(2)ベストレースクィーン写真集』ワニマガジン社

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