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◆さすらいの傍聴人が見た【女のY字路】第3回

「呪い殺すぞ」「しっしっしー」二代目騒音オバさん 隣人との土地取引トラブル


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※イメージ画像 photo by . Athalfred . from flickr

 「騒音オバさん」で有名だったのは奈良の某女性だが、かつて二代目騒音オバさんとして世間を騒がせた女性がいた。

 07年、関東のある都市で、隣家に度重なる嫌がらせをしたとして逮捕されたのはC江(逮捕当時63歳)。隣家の前で「呪い殺すぞ」と怒鳴ったり「しっしっしー」「出て行け」など大声を上げ、また奈良の事件に学んだのか、大音量でラジオをかけたり、フラッシュを焚くなどの迷惑行為もはたらいていた。

 C江は県の迷惑防止条例違反で逮捕、起訴。通常、この迷惑防止条例違反というのは電車内での痴漢が大半(ほかダフ屋行為など)であり、判決はたいてい、初犯であれば執行猶予である。ちなみに痴漢は衣服の上から触ると迷惑防止条例違反だが、パンツの中に手を入れたりして直接肌に触れると強制わいせつとして逮捕される。と、わいせつに関する豆知識はここまでにして、隣家への嫌がらせに対して迷惑防止条例違反を適用しているのだから、その嫌がらせぶりは相当なものだったと推測できるだろう。

 さて法廷に現れたC江は保釈されており、千鳥格子のカットソーに白いパンツ、という上品な装いであった。とても「呪い殺すぞ」などと怒鳴りそうには見えないから人間は分からないものである。しかし、そのように上品そうなC江がそこまで豹変するには、何かきっかけがあったのだろう。

 公判にはまず88年から05年まで、C江宅の隣に住んでいた男性が証人出廷し、トラブルになったきっかけが語られた。こちらも上品そうで、C江の隣に住んでいなければ、トラブルとは無縁だろうと思われる雰囲気の男性だ。

「隣(C江宅)がどれくらい前から住んでいたのかよく知りませんが、私どもより10年以上前だと聞いています。初めて嫌がらせを受けたのは、土地の取引話が出た後だから、97年末ぐらいですかねぇ......」

 土地取引の話とはこうだ。

「前年の秋、C江宅の土地の一部を28坪、買ってくれないかと言われました。坪単価は約78万円です。当時私の家には受験生がいたので、買える状況ではないと断りました。すると翌年の春に改めて夫婦で家にいらしたんです。半年前、含みを持たせるような断り方をしたので、買うことを決めました」

 しかし、その話も二転三転する。

「当初28坪だったのを、25坪にしてほしいと言われ、結局最終的に22坪になりました」

 この微妙な坪数の減らし方は......?

「その大きさの土地を隣(C江宅)から買うには、隣の家を少し動かさないといけない。その工事が終わるのを待って、改めて購入するという話になり、契約をしました。違約金は購入金の20パーセント、345万です。

 そして工事終了を待っていたところ、お隣から『建物を移動させず、駐車場分だけ買ってほしい』とまた言われました。駐車場はあるので、断りましたが、その後も『工事業者の都合で工事ができない』とか『売る土地を15坪減らしてくれないか』とか言ってこられました」

 こうして話はC江の一方的な要求でコロコロと変わるも、証人は「坪数が下がると土地活用の可能性が下がるので、最終的に15坪1000万円なら買う」と告げ、C江も納得。そしていよいよ契約の日が来た。

 しかし、結局その日に来たのはC江の娘婿。契約は破棄されたのである。

 一体C江は何をしたかったのだろう。そして、この後から嫌がらせが始まったのであるから気の毒な話だ。

 証人は当時のことについて、小さな声で訥々と語ってゆく。

「小さな嫌がらせがエスカレートしていきました......。椿の木の枝を切られたり、敷地内に入り込まれたり、駐車場の車に傷をつけられたり、ゴミを投げ込まれたり、表札に痰を吐かれたり、門にツバを吐かれたり......。騒音も、土日の度に。窓を閉めてもテレビの音が聴こえないくらいの音量でラジオを流していました。ラジカセを、ウチの居間の向かいの窓を開けてそこから......。あと、土日になると窓越しに『死ねー、出てけー、ストーカー』と怒鳴り......」

 つくづく、気の毒な隣人である。

 その後証人は引越し、次の住人が住んだものの、嫌がらせ行為は続き、3カ月で転居。その次に転居してきた住人ともトラブルは続き、このときC江は逮捕された。

 ところで、そもそものキッカケは土地取引の話だったのであるから、そのときの証人が引っ越したら嫌がらせは収束するはず、と思うのが普通の感覚だと思うが、C江はその後も嫌がらせを続けている。

C江「最初は土地を売らなくなったことで感情的になって......。精神的におかしかったので......」

裁判長「でもあなたその後の住人にも嫌がらせを続けてるよね? 何でトラブルを引きずることになるの?」

C江「.........」

 本人にも理由が説明できないようだ。また嫌がらせの内容については

「『しっしっしー』と言ったのは、隣の家の木が伸びてウチに入ってきてるので、確認の意味で『よしっ、よしっ』と。木を切ったことは嫌がらせではなく、隣家の庭に薬品をかけたこともないです。ツバを吐いたのは一度だけあります、先方に謝って許してもらいました」

 と、オオゴトになるような行為はしてないというような供述ぶり。だが、このとき傍聴席から「ウソだ!」と小声の反論が聞こえた。隣家の住人たちだろうか。

 裁判長も疑っているようで、半笑いで責める。

裁判長「あのさ。『よしっよしっ』て言うと、普通"よ"の方にアクセントかかるよ? 証拠のビデオでも『しーっ』って言ってるよ?『よっ、しー!』って確認するの? 語尾伸ばすの?」

C江「......よし~。......」

裁判長「防犯カメラにも入ってるよ? そんな大きい声じゃなかったよ?」

C江「......」

 結局、嫌がらせ行為をしたことは認定され、懲役10月、執行猶予3年の判決を受けた。

「被害者らの精神的苦痛は絶大。被告がそれをどれだけ理解し、反省しているのか疑問だ」と判決でも反省ぶりを疑問視されているが、公判でもC江が逮捕当時、護送車の中で『許せない、出たら徹底的にやってやる』とつぶやいていたことが検察から指摘されている。

 土地取引の話がきっかけなのは理解できるが、住人が入れ替わっても嫌がらせし続けた目的が謎である。公判では長年住み続けている自分の家への愛着も口にしていたから、それが高まるとともに、隣家からの木の枝が敷地内に入ることなど、些細なことが気になってきたのか。

 というかそもそも、土地取引の話は、ハタから見ていると完全にC江のワガママの結果、頓挫したように見える。が、おそらく本人はそう思っておらず、「お隣がこちらの提示する条件に納得してくれなかった」と隣人のせいだと考えていたのだろう。そして数々の嫌がらせ。自分の城の周りでは自分が王様だ、と言わんばかりの振る舞いだ。

 その後報道を騒がせていないところを見ると、おそらく「徹底的にやってやる」という宣言どおりには実行されなかった様子だ。このまま、両家とも穏やかに暮らせていればよいが。

 最後にやっぱり気になるのは、土地取引の坪数だ。あの微妙な坪数の変化は一体何だったのだろう......。謎の多い事件である。
(文=高橋ユキ)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
裁判所で出会った面々と、女だけの傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成し、ブログ「霞っ子クラブの裁判傍聴記」を開設(現在は閉鎖)。書籍は『霞っ子クラブ~娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)ほか、『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社新書)など。好きな食べ物は氷。

『すぐに役立つ近隣トラブル解決の法律―しくみと手続き』著:高橋裕次郎/三修社刊

知識が世紀末を生き抜く最大の武器

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【第1回】ホームレスを手なずけ、大家を手にかけたA子のプライドとは
【第2回】動機の見えない放火殺人




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