キャバクラユニオンによる歌舞伎町デモ行進 声をあげた水商売の労働者たち

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 アジア最大の歓楽街といえば、東京都新宿区歌舞伎町。今月26日、「花の金曜日」の夜の歌舞伎町にシュプレヒコールが巻き起こった。この夜行われたのは、08年来、「派遣切り」などの問題に取り組む「フリーター全般労組」の分会である「キャバクラユニオン」によるデモ行進である。のべ1時間にわたるデモ行進で、不透明な名目での天引きや、店を辞める際の理不尽な罰金、他にもセクハラ・パワハラ・脅しなど、風俗業界独特の労働問題に抗議した。

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 いわゆるプレカリアート(不安定労働者)の問題に主に取り組んで来た同労組にとっても、水商売の労働者たちの主張を中心にしたデモは今回が初めてとのこと。土地柄もあってか、数百人の警官が動員される「厳戒態勢」となった。

 夕6時、東口広場からデモ隊が出発。先導するトラックが大音量でロック音楽を流し、それに続いて、水商売風の恰好の男女が列を為しながらシュプレヒコールをあげるという、いわゆる「サウンドデモ」だ。靖国通り、花園通りなど、歌舞伎町周辺の大通りを一周するコースを辿った。途中の沿道には、興味深げに見つめるキャバクラ嬢風の女性や、いぶかしげな視線を投げる「黒服」の男性たちの姿も。

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 当然ながら、歌舞伎町には、キャバクラ嬢たちの接待する相手である常連客や、労使問題で直接ぶつかる経営者たちも多数。他のデモ行進とは異なり、沿道の聴衆たちの間にも、「当事者意識」が垣間見えたのが、今回のデモの最大の特徴だったのかもしれない。

 実際に、デモを目にしたホストの男性から、

「ホストでも労働組合とか入れんノ?」

 といったような問い合わせが、労組事務所にあったようである。

 沿道でシュプレヒコールに加わっていた、現役キャバクラ嬢の女性はこう話す。

「罰金とかのお金の問題もそうだけど、オーナーからの暴力やセクハラなど、水商売以外の会社だとあり得ないようなことが、この業界にはたくさんある。『薬漬け』だって都市伝説じゃないし。法律とかはよく分からないけど、安心して働ける職場になったら良いと思う」

 ところで、すでに多くのメディアでは「キャバクラ嬢ら約150人がデモ行進」と伝えられているが、キャバクラユニオンの参加者は40人程度で、その中でもキャバクラに勤めている「現役」は半分ほどとのこと(主催者発表)。顔出しNGの女性たちには、覆面での参加が推奨されていた。

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 また、当日のデモ行進の隊列の半数以上は男性であり、メインのアジテーターも男性。「お水美女たちのお祭り行進」を期待していた観衆には、少々期待はずれの結果となった。公式発表によると、水商売には直接関係のない全般労組の組合員も多数動員されていた、とのことだが、仮装や女装で「キャバクラ嬢風」を装うのにも少々無理があるのでは、というのが率直な感想である。(主催者によると、「趣味で女装をしている組合員もいる」とのことである。)

 とはいえ、同分会が、数多くの悩める現役キャバ嬢たちの相談を受けていることも事実。昨年末のキャバクラユニオン開設以来、労使問題として案件化したものですでに20件を上回るという。

 新宿歌舞伎町というロケーション選びと、サウンドデモというポップな形式が功を奏したか、今回のデモは、ネオン街の住人たちに強く呼びかける結果となった。さまざまな問題に悩むキャバクラ嬢たちが安心して働ける環境が整うことによって、歌舞伎町が歓楽街としての一層の発展を遂げる可能性は充分にあると感じたのが、今回の一件であった。

 ちなみに、キャバクラ嬢の問題を中心に取り扱う同会はやはり、女性の人権問題に触れることも多いというが、海外の一部ウーマンライト系の団体が行っているような「ヌード抗議活動」などを行う予定があるのかと聞くと、そちらはきっぱりノーの返事。どうやら、「女装趣味の組合員」のパフォーマンスを見ることはできても、正当派「セクシー路線」のデモ行進は期待できないようである。これには少々ガッカリ!?

『キャバクラ嬢の作法』著:酒巻明子

 
お水の花道も楽ではない

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