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【アイドル音楽評~私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて~ 第6回】

AKB48「桜の栞」は、秋元康による"20世紀再開"のお知らせだった!?


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 AKB48による新曲「桜の栞」をもって、20世紀は21世紀において拡張された。そう断言したくなるのは、この「桜の栞」が最初にテレビで初披露されたとき、合唱曲というスタイルに「正気か?」と首を傾げたものの、結果的に初動が31万枚以上という異常な数字を叩き出したからだ。もちろんオリコンの週間シングルランキングでは1位。1980年代におニャン子クラブで一時代を築いた秋元康の手法が、21世紀においても見事に成功したのだ。

 そもそもこの連載「私を生まれ変わらせてくれるアイドルを求めて」は、AKB48の前作「RIVER」を聴いた「メンズサイゾー」編集長による提案がきっかけで始まった。そのときの編集長の指摘は、秋元康が作詞した美空ひばりの「川の流れのように」が記念碑的な作品であるように、同じく「川」をモチーフとしたAKB48の「RIVER」は重要な意味を持つ勝負作だ、という主旨だった。その説に沿うなら、AKB48は見事に川を渡り切り、23万枚以上のセールスを記録した。「RIVER」は、ジャネット・ジャクソンの「リズム・ネイション」を彷彿とさせる集団パフォーマンスにラップをかぶせたオープニング。さらに終盤の転調によって、強烈なカタルシスをもたらした。

 そして一転、この「桜の栞」である。冗談かと思うような展開だ。作曲はAKB48に多数の楽曲を提供してきた上杉洋史、編曲はRAG FAIRの仕事で知られる光田健一。根本的な問題として、合唱曲なのでピアノを主軸とした伴奏で、ベースとドラムというリズム隊は存在しない。ハーモニーの美しさに酔っている場合ではない。何なのだ、これは?

 その問いの答えになるのは、テレビ東京系で放映中のドラマ『マジすか学園』の存在だ。学園全体がヤンキーだらけという破天荒な設定のこの学園ドラマでは、毎回格闘を経て泣かせる雰囲気のエンディングへと展開するのがお約束となっている。その最後で流れるのが「桜の栞」だ。執筆時点で『マジすか学園』は全12話のうち第7話までが放映された。残りの回数を数えると、最終回はまさに3月の末、卒業シーズンだ。そして、『マジすか学園』内でも、「卒業」が重要なキーとなっている。現実と虚構における「卒業」が「桜の栞」という楽曲をさらに輝かせようとしているのだ。こんな仕込みが昨年から静かに行われていたのである。

 そう考えたとき、ハッと気付く。秋元康はAKB48の「桜の栞」を単に卒業ソングの定番にしようとしているというよりも、21世紀における新たなスタンダードを自分で作り出そうとしているのではないだろうか? アイドルのシングルが合唱による卒業ソングという斬新な試みすらただの建前で、「桜の栞」の本質は、「秋元康による20世紀の更新」にこそあるのでのではないか? ――震撼した。彼はそんなイカれたことを平然とやる男だろう。

 私が「サイゾー」本誌のために秋元康にインタビューしたのは2007年6月のことだ。突っ込んだ話をするほど、彼が雄弁かつ楽しげに話してくれたことを思い出す。それから約2年半の紆余曲折を経て、AKB48はエンターテインメントとして新たな次元に突入している。この勢いはもはや、たびたび問題視されるAKB48商法など関係ない。年末年始のコンビニで、雑誌の表紙がAKB48だらけだったことは、そんな小手先のヲタ騙しでは説明がつかないのだ。

 「桜の栞」には、「Type-A」「Type-B」「劇場盤」の3種類が存在するが、東京ビッグサイトで行われる個別写真会参加券と各種メンバー生写真1枚が封入された劇場盤はすでに入手不可能。だが、岩井俊二監督のビデオ・クリップを収録したDVD付きの「Type-A」「Type-B」どちらを買っても損はない。「Type-A」にはメンバーが様々なシチュエーションで「卒業おめでとう」と言ってくれる映像、「Type-B」も同様の趣旨だが小芝居や演出の異なる映像が延々と収録されており、とても気持ち良くなれる。どちらか1枚という向きには、ベタベタのコード進行と掻き鳴らしすぎなほどのエレキ・ギターが心地良い「Choose me!」(チームYJ名義)を収録した「Type-B」をおすすめしたい。

 ファンを休ませる間もなく、秋元康が次々と用意してくる仕掛け。セールス面での成功の次に、彼は何を用意するのか? それが想像もつかないサプライズであることを願いつつ、心待ちにしたい。20世紀の延長でもいい、もっと異常な21世紀を体験したいのだ。


産経新聞速報動画チャンネルより引用

◆宗像明将
1972年生まれ。音楽評論家として、日本のロックやポップス、英米のポップス、ワールドミュージックを中心に執筆。その一方、2002年からソニンのヲタに。彼女の歌手活動停止後は、魂の救済を求めてPerfumeとtoutouのヲタになり地下へ。現在は地下から地上までのアイドル・シーンを見守る。http://www.outdex.net/diary/

SKE48『手をつなぎながら』日本クラウン


名古屋もすでに秋元の領地だという

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