「唯ちゃん生誕祭」に「彼女募集記念」 アツすぎるぜ地方競馬!!

2553815054_ed79aeb06c.jpg※イメージ画像 photo by Kristian M from flickr

 11月29日、東京競馬場にて、日本最大の国際交流レースであるジャパンカップ(GⅠ・1着賞金2億5,000万円)が開催された。前走の天皇賞で圧倒的一番人気に応えられなかったウオッカ陣営が、騎手を武豊から短期免許で来日中のクリストフ・ルメールに変更する決断を下し、外国馬も近年で屈指のレベルと、多くのファンの注目が注がれていたが、1番人気に支持されたウオッカが、皮肉なことに武騎乗のリーチザクラウンの作り出したよどみないペースに乗って直線半ばで先頭に立ち、猛烈な脚で追い込んできたオウケンブルースリの猛追を2cm凌ぐという、昨年の秋の天皇賞を思い起こさせる劇的な勝利を上げた。日本産牝馬のジャパンカップ優勝と、牝馬のGⅠ7勝は共に史上初の快挙であった。

 そんな中、別の意味で熱い注目を集める競馬レースが高知競馬場で開催されていた。「中央競馬」と呼ばれる日本中央競馬会(JRA)管轄ではない、地方競馬全国協会(NAR)に加盟している、各地方自治体が運営している競馬開催のことを「地方競馬」と呼ぶのだが、高知競馬もその1つだ。負け続けて人気を博したハルウララ号が所属していた競馬場としてご記憶の方も多いかもしれない。

 そのレースとは11月27日に行われた、その名も「桜が丘高校軽音部協賛 唯ちゃんの誕生日特別」。1着賞金は11万円である。百も千も抜けてはいない、かっきり110,000円なのだが、そんな小さなレースのどこが注目なのかといえば、競馬のレース名としては明らかにおかしい感満載の「唯ちゃん」である。この「唯ちゃん」は、アニメ化されて大人気を博した『けいおん!』の主人公平沢唯のことなのだ。アニメや原作漫画をご覧になったことがない方でも、名前のネタ元である、元P-MODELの平沢進のTwitterが大変な騒ぎになった件で、ご存知の音楽ファンもおられるのではないだろうか。

 では、なぜこのようなレースが行われているのかといえば、それは地方競馬の売り上げ不振にある。JRAも売り上げ減少に苦しんでいるものの(JRAの最も安い1着賞金は500万円)、地方競馬の苦境はその非ではない。近年、中津競馬や上山競馬、宇都宮競馬などの廃止が相次ぎ、存続している各場においても、先述の高知競馬やホッカイドウ競馬、岩手競馬などにおいては喫緊の問題となっており廃止か否かが盛んに論じられている。大型馬がそりを引く、文化としても価値の高いばんえい競馬も、ソフトバンクの支援を得たものの、未だ先行きは不透明というのが実情だ。そのような状況下において、一部の地方競馬場では、少しでも売り上げを上げようと個人や法人の協賛レースを実施しているのだ。

 この協賛レースは個人なら1万円程度で協賛でき、レース名だけではなく、PR文章も添えられるために、熱い愛情をモニタや単行本に向けるだけではなく、社会に向けて表明したい人々の注目を浴びている。実は「唯ちゃんの誕生日特別」の1つ前のレースでは、「K-C!961P協賛 美希2してあげる特別」が開催されており、前日には荒尾競馬場でも「みっきみきにねてやんよ杯」が開催されている。これは新人プロデューサーになってアイドルを育てていくゲーム『THE IDOLM@STER(以下、アイマス)』シリーズに登場する星井美希の名前から来ているのだ。アイマス関連は、特に協賛レースにおいてホットなジャンルとなっており、昨年の11月23日には、「961プロ協賛 星井美希誕生日特別」(高知競馬)が開催、他にも「K-C!961P協賛 我那覇ヒビキさん特別」(高知競馬)、「三浦あずさ永遠の二十歳記念」(荒尾競馬)といったレースが開催されている。

 また、協賛レースが行われているのは競馬だけではなく、たとえば今年の星井美希の誕生日である11月23日には、豊橋競輪で「星井美希誕生日記念」が行われている。競馬以上に漢くさい競輪場で、星井美希どころか、アイマスに何の思い入れもないだろう屈強な男たちが必死でペダルを踏み、その様子に声援を送ったり、野次を飛ばすお父さん方――という光景を思い浮かべるだけで涙が溢れそうではないか。

 ちなみに、競艇でも協賛レースは行われており、特に有名なのは2004年2月22日に戸田競艇場で開催された、「『だいこんおろし』の彼女募集記念」であろう。このレースを中継していた日本レジャーチャンネルにおいて、女性アナウンサーがツボに入ってしまったようで、まともに喋れない空白が頻発するという放送事故が起きたのである。当時それなりに話題になったので、YouTubeなどでご覧になった方もおられるだろう。ちなみに、だいこんおろし氏の彼女募集はその後も続いており、4度目の協賛レースでは、「第4回 群馬のヨン様こと 『だいこんおろし』の彼女募集記念」というダーウィンもビックリの進化を果たしていたりする……。
(文=B.I.Sachiko)

『たいようのマキバオー 1』集英社

 
地方競馬にはドラマがある

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