ラッシャーみよしの「エロ業界栄枯盛衰物語」第15回:1991年

女による女のためのハダカの遊園地 ジュリアナ東京


RASH1501.jpg1991年当時のジュリアナ東京

 

 1991年といえば、あれよ、あれ。ジュリアナTOKYO! バブル終焉期、女たちが断末魔のアホ踊りのように半裸で踊り狂ったジュリアナ東京ですね。お立ち台(高さ1.2メートル、どうでもいいけど)の上でパンツ丸出しのボディコン姿、手にはジュリ扇と呼ばれた原色の扇子を持って、腰をクネクネ、クネクネ。「これは何なんだ!?」と社会現象になりました。

 あの頃、テレビをつければ必ずジュリアナの映像が流れていました。深夜番組はもとより、奥様向けのワイドショーからニュース番組まで。

 たまたまこの時期、ぼくはTBSの「スーパーワイド」という奥様番組のレポーターをしていたので、ジュリアナには何度か取材に行きました。そこは、見上げればパンツの山、見渡せばフトモモの林。

 と、ここでハアハアと興奮すべきなんでしょうが、なぜか様子が違う。フトモモを見ても、パンツを見ても、お尻を見ても、全然スケベじゃないんです。理由は明快、そこは風呂場の脱衣場みたいなものなんです。女子が大勢集まってワイワイ騒ぎながら、ハダカでふざけあっているような……。

 つまりここには、男性の目を意識するメンタリティーがまったくなかったわけですね。確かに、「ボディコン」と呼ばれた特殊なスタイルは、本来その言葉が持っていた女性らしい大人のファッションの意味からどんどん逸脱して、エナメルのペラペラ素材になり、体の線が下品なくらいに露出され、丈もお尻がやっと隠れるような短さにまでエスカレート。風俗店の制服みたいになっていたわけですが、そんなあられもない姿だって、男を意識していなければただの風呂場の姉ちゃんでございます。


RASH1502.jpg当時一世を風靡した荒木師匠こと荒木久美子氏
(2009年9月6日、ジュリアナ東京復活の際に撮影されたもの)

 

 当時のインタビューで女の人たちが答えてくれた言葉が思い出されます。

「ボディコンは戦闘服みたいなものなんですよ。これ着て、よしっ、いざお立ち台へ! って」
「露出って気持ちいいからどんどん過激になるんだけど、男の目を意識したことはないなぁ。女の子同士で張り合うみたいな……」

 そう、ジュリアナは「女による女のためのハダカの遊園地」だったわけです。だから、男がお立ち台の下でスケベそうな顔して立っていてもお構いなしだったわけですね。この場合、男は単なる石みたいなものです……。

 この時つくづく、「エロというものは男と女、女と男の互いの視線の中に発生する相対的なものなのだ」と思ったわけですが、後日ぼくは素晴らしい光景を見ることになりました。

 ジュリアナ東京の最寄り駅はJR田町駅なんですが、そこから何分くらい歩くのかな? 忘れてしまったけれど、駅から店までみんなでゾロゾロ歩いていくわけです。ボディコンで(笑)。駅から店までは普通の道ですから、これってアホみたいな姿なわけですよ。そして、この行列の時だけはなんとなく恥ずかしそうで、そして男の視線を避けるようなところがあって、それがとてもヤラしかった。

 店内に入ってしまったらそこは別世界、女の特殊銭湯。しかし、行き来の道中は日常の延長です。

 スカートのすそを気にして歩くボディコン女性たちの顔は、さっきまでオフィスでコピーをとっていたOLさんのまま。家に帰って、思い出して、オナニーしたものです。

 そして94年、ジュリアナ東京は閉店。世の中はとうに不景気真っ直中を漂っていました。そもそも田町から徒歩……というところも、すでにひとつの時代が終焉していたんでしょうかね。誤解なきように言っておくと、バブルを象徴したのはジュリアナ東京ではなくて、マハラジャの方ね。

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